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大手広告会社での事件を受けて(1)
 大手広告会社・電通の新入社員が過労自殺した件、私も初職が電通とは比べ
ものにもならない規模ではあるが、広告会社であったから、非常に興味をもっ
て見ている。

 そもそも1991年に、同じく電通の新入社員が過労死し使用者である電通の安
全配慮義務違反が認定された前例が判例となるほど、日本の労働史に大きな影
響を与えたものが再度、繰り返された(実際には同社の複数の支社でも、長時
間労働で、是正勧告を受けていた)のは残念である。

 今回の事件をマスコミ等で耳にするたび、私自身の広告会社での6年間が蘇
る。今であれば、労基法違反の長時間労働をしていた本人だからである。

 3年目当たりから多数のクライアントを抱えて走り回っていた。私は、不動
産会社、マンションディベロッパーが主クライアントで、マンションの売り出
し時期は重なるので年に10物件程度の新規発売マンションの広告を担当した。
加えて、毎週50万部程度のチラシを蒔く不動産仲介大手を抱えていたので、ピ
ーク時は月200時間なんて日常的、楽に超えていた。会社は9時−18時だが、私
は毎日7時に出社、朝、通勤途中で立ち食いそばを食べて出勤すると気がつく
と昼飯が夜19時はざら、昼飯を食べることすら忘れるほど忙しかった。22時く
らいまで仕事をして、取引先が飲んでいる席に合流、二次会を接待。

 土日はマンションが販売中なので、販売事務所の巡回、担当者との現地打ち
合わせ。ある会社は日曜日の18時から販売会議を現地で行うので、そこに参加
する。その場で決まったことを月曜日朝から実行に移す。月曜日発注で木曜日
には4色×1色のチラシ10万部納品なんて、日常茶飯事にやっていた。

 入社してから退社するまで上司であった人と、今でも2年に一度くらい酒を
飲むのだが、「おまえが記録した78日間連続出勤は今でも破られていないよ」
が乾杯の挨拶になっているほど働いた。

 昔の話であり、今はこんなことは自分も会社もできる時代ではないが、だか
らこその「今」があると思っている。


             (2016/12/05 人材開発メールニュース第903号掲載)


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