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人が育ちやすい距離感の設計
 採用環境が変化する中で、採用だけでなく定着・育成をどう展開するかは重
要なテーマです。

 人が育ちやすい環境の一つの特徴として、「見せる」機会が多いということ
が挙げられます。見せるとは、先輩や上司が後輩に仕事ぶりを見せる、働く姿
(背中)を見せると言う意味です。人材育成の金言ですが「やってみせる」と
いうことは、いつの時代においても大切です。逆に言えば、年々見せる機会が
減っているのではないでしょうか。

 マニュアル化が進み、様々な教育ツールが開発され、また業務の効率化・分
業化が進む中で、以前よりも誰かの仕事ぶりを見ながら仕事を覚える機会が減
っていると言われます。極端なところでは、職場の中でも隣の人が何をしてい
るのかわからない…そんな話題も増えています。
 たしかに、仕事を覚えるための情報はたくさん入手できるようになっていま
すが、実際にその作業をする雰囲気や空気感を体感する場面が減っている組織
が多いようです。

 よく「自分らしく・自分のやり方」と言われますが、最初から自分のやり方
があるわけではありません。最初は誰かがやっていることを見て、真似すると
ころから始めます。真似しながら自分の創意工夫を重ねることで、自分の仕事
のスタイルは確立されると言えます。自分のやり方を確立するためにも、数多
く見ることは重要です。

 また人が育ちやすい環境のもう一つの特徴として、「仕事の意味や文脈を伝
える」と言うことが挙げられます。これもよく言われることですが、ただ単に
仕事内容や作業方法を説明するのではなく、なぜこの仕事をこのやり方でやる
のか、前後の工程や周囲との関係も含め伝えることが必要です。
 これも同様ですが、仕事内容や作業方法だけ説明されても、それ以上のもの
は生まれ難いと言えます。仕事の意味や文脈を理解した上で、刻々と変化する
現場の状況を察知しながら、アレンジを加えたり、新しいものを生み出すこと
で、仕事の改善・進化・高度化が進んで行きます。

 「見せる」「仕事の意味や文脈を伝える」ことを実現していくためには、日
頃からどんな距離感で仕事をしているかが大切です。
 見せやすい(見やすい)距離感なのか?、伝わりやすい距離感なのか?。物
理的・心理的な距離感がどうか?、組織開発を進める上で、距離感の設計は今
後益々重要になると考えられます。


             (2014/09/29 人材開発メールニュース第795号掲載)
                          humanize:吉次 潤


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