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介護の「質」
 皆さんは「介護福祉士」という資格、職業をご存じだろうか。

 専門的な知識などを生かして介護をしたりする国家資格で、名称独占資格の
一つである。資格取得者は約118万人。私はこの資格取得者を養成する専門学
校の教員の方々と接する機会が多く、来年4月から、■専門学校の卒業生にも
国家試験を義務づける(これまでは課程修了で取得)、■専門教育を受けてい
ない実務経験者には450時間の研修を義務づけ(これはほぼ一緒)と、取得条
件を厳しくする予定を聞いており、学校への入学者、資格取得者の減少を危惧
していた。

 ところが、厚生労働省は人材の質を高めようとして変更する資格取得条件の
厳格化が、逆に介護現場の人材不足を悪化させるおそれがあるとして、実施を
一年延期することを決定した。

 現場から反対意見が出されたことが理由だが、この見直しは二年前にも同様
に行っており、今回と同じ理由で三年間延期されることになる。

 介護の質を高めながら慢性的な人材不足をいかに解消するか、本質的な課題
を解決できずにずるずると旧制度での資格取得が続くことになる。多分、また
延長だろう。当然、「質」は高まっていない資格取得者をこれまでも輩出し続
けることになり、逆に『介護福祉士』という資格そのものの地位が上がらない
のも心配である。

 入学者を確保できる専門学校、人手不足を軽減できる現場、批判を避けられ
る厚生労働省、まさに丸く収まる結果だが、そこに介護サービスを受ける人の
存在は希薄だ。

             (2014/03/03 人材開発メールニュース第767号掲載)


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