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キャリア・コンサルティングの普及?
 最近、ある勉強会に参加していた時に、隣のテーブルから「キャリア・コン
サルティングって、ある意味、必要悪ですよね」と話しているのが聞こえてき
ました。発言の詳しい背景はわかりませんが、キャリア・コンサルティングが
注目されるのは、経営環境や雇用環境が悪い時期で、逆に環境が安定している
時には、さほど大切だと言う話題にならない…そんな意味合いで話されていた
ようでした。

 “必要悪”と言うのは極端かもしれませんが、キャリア・コンサルティング
が普及してきた背景を辿ると、雇用の悪化が普及に推進力を与えた側面は否定
できません。そういう意味では、キャリア・コンサルティングの話題が少ない
時は、雇用や経営環境が安定している状況なのかもしれません。

 以前からキャリア関連の仕事に携わっていますが、25年ぐらい前は、企業内
のキャリア教育は、終身雇用を前提とした退職準備的な意味合いが強く、退職
後を想定としたライフプラン的な取り組みがほとんどでした。退職準備以外で
は、団塊世代の高齢化と共に将来のポスト不足が想定され、複線型人事制度が
導入されることが増え、それに合わせてキャリアプランを考えるような取り組
みが少しずつ増えていましたが、経営資源に余裕がある一部の大手企業だけが
取り組むテーマだったと言えます。

 前述のように急速に普及して行ったのは、バブルが崩壊し、リストラが急速
に展開され、再就職支援や新卒の就職支援が増えていったことが背景にありま
す。実際バブル崩壊後に急速に広まった(再)就職支援サービスは、リストラ
が一巡する中で、サービスそのものが減少していった時期がありました。しか
し、その後いわゆるリーマン・ショックが起こり、また様々な(再)就職支援
サービスが増え、現在に至っているような状況です。

 これまでは、「ミスマッチが起こる・増える→その対応策としてキャリアを
考える(対処療法的なキャリア・コンサルティング)」という場面が多かった
と言えます。しかし、本来は、ミスマッチとは関係なく、自立(自律)的な人
材を育成する、自分自身のライフキャリアについてセルフマネジメントできる
ようになることを目指すものです。

 そういう意味では、対処療法的なキャリア・コンサルティングについては、
どうすれば減らせるか、無くなるかを真剣に考えることが必要だと言えます。
 逆にどうすればセルフマネジメントが普及していくかを考える必要があると
言えます。そろそろ、キャリア・コンサルティングの普及もフェーズを変えな
ければならないですね。


             (2012/08/27 人材開発メールニュース第692号掲載)
                          humanize:吉次 潤


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