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ロンドンオリンピック開幕!
 日本列島が猛暑に包まれる中、ロンドンオリンピックが開幕した。開会式か
ら数日のオリンピック報道を見ていると、“武士の情”とか、“敗者への思い
やりや敬意”とか、そういうものがないのかと感じる場面があった。

 例えば、柔道男子66キロ級準々決勝、日本選手と韓国選手との試合で旗判定
が青から白(日本選手)に一転、覆ったシーンがあった。

 勝利が決まってNHKのスタジオに映像が変わった瞬間、女性アナウンサーが
「やった!」と叫んだ。日本人選手贔屓で、勝利したことへの感動はわかるが、
勝利を手にしたと思ったら一転、負けを宣告された韓国選手の気持ちを思いや
る気持ちはないのだろうか。判定の不明瞭さには何も触れずに、ただ「勝った、
勝った」の台詞、まるで壊れたスピーカーの連呼である。それなのに、同じ日
に一回戦で負けた女子選手の映像は一回も流さない。昔の大本営発表とは、き
っとこんな感じなのだろう。

 ほぼ同じ時期にキックオフされたサッカーの日本対モロッコ、決勝トーナメ
ント進出を確実にした勝利に沸くことはいいが、これもNHKの、大興奮で日本
選手のすばらしさを説明していた解説者の口から、モロッコ選手の大半がイス
ラム教徒で、丁度、ラマダンに入っていて試合当日も断食をしていたことは解
説されない。モロッコ選手もラマダンを理由に「負けた」とは言わないだろう
が、そんな情報を一言添えてあげる余裕のない解説者に、戦略や戦術は語って
もらいたくない。

 判定が覆って負けた韓国選手は敗者復活戦で銅メダルに輝き、残念ながら準
決勝で負けた日本選手も三位決定戦で勝って銅メダル、もしかしたら勝利の神
様は公平な裁きを下してくれたのかもしれない。表彰式でニコリともしない日
本選手と、笑顔の韓国選手の表情の差が印象的だった。その表情の差が本来は
報道すべきポイントだったように思うが、それに言及する各局のアナウンサー、
解説者、タレントなどサポーターは見た限りでは一人もいなかった。

 今年のオリンピックも、映像だけで音声を消して見る時間が増えそうである。
一度やってみると良いですよ。競技を集中して見られます。


             (2012/08/06 人材開発メールニュース第690号掲載)


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