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「値頃」「手頃」「お買い得」の決定権は買い手側
 いささか旧聞の話で、かつ重箱の隅を突くような相変わらずの些末な話題で
恐縮だが、5月12日放送のNHKスペシャル「追跡!世界キティ旋風のナゾ」、ご
覧になった方も多いと思う。

 放送内容そのものは、ハローキティブランドが世界109の地域と国に進出、
ライセンスビジネスだけで営業利益150億円を稼ぎ出しているというもので、
その躍進の姿には驚かされるばかりであった。番組そのものはとても納得感も
あり、勉強にもなった。

 その番組の中で、新・ニッポンブランドが世界で生き残っていくための条件
を探る部分があり、海外に進出した日本のカジュアル衣料ブランドが取りあげ
られていた。そして、現地雇用された店員に苦手な日本流のサービスは何かと
いう質問をする場面があった。その際出てきた答えが「服をたたむ」「呼び込
みをする」である。その後の展開を見ながら、私にジワリと違和感が沸き上が
ってくる。

 そうか、私たちは「顧客サービス」の一つとして呼び込みをしてもらってい
るんだ、服をたたんでもらった陳列もお客への店側から提供されているサービ
スなんだと、初めて教えられたのである。そうなると、繁華街で呼び込みをし
ているお兄さんたちもサービスとして“カモ”に店のすばらしさや料金の安さ、
心のこもった接客を教えてもらっていることになる。NHKが視聴率を上げるた
めに「清盛」の情報を聞きたくもなく見たくもないのに「番組宣伝=呼び込み」
しているのも視聴者へのサービスなんだと思うと、この解釈は腑に落ちる。

 また、「服をたたむ」も、店側の商品保護や商品アイテムを数多く陳列する
ための手段だと思っていたが、顧客に「見やすく、選びやすく」させるための
“サービス”として提供されていたと思うと、たたまずに“吊してある”衣料
店は手抜きサービスをしていると思うのは屁理屈か。

 考えてみれば、提供されるものをサービスと見るか、当然の行為(売るため、
買うため)としてみるかは、受け取る側(購買者、消費者)の判断、印象であ
り、提供する側が決めることではない。「値頃」「手頃」「お買い得」と煽っ
ても、それを判断し購入する決定権は買い手側にある。
 提供する側が決めるのは、それこそ押し付けである。


             (2012/06/04 人材開発メールニュース第681号掲載)


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