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経営・事業の動きから人材開発を見直す
 人材開発を見直す場面において、必ず費用対効果の話題が出てきます。費用
対効果をどこで見るか(評価するのか?測定するのか?)は、考え方・やり方
も様々です。組織内でも合意が取り難い部分でもあります。
 実際に費用対効果の分析に関する相談・依頼を受ける場合は、大体5年ぐら
い過去を遡って、直近5年間の経営の状況と人材開発の流れを整理するような
方法をよく使用しています。

 まず経営の状況については、直近5年間を3つの視点で振り返ります。3つの
視点とは、顧客(市場)・商品製品(サービス)・組織(人員)です。3×5の
マス目などを作って、トピックス的なものを整理していきます。
 その次に人材開発の項目について、経営の動きと同様に5年分の取り組みを
書き出します。初めて分析する際には、「採用」「研修」「制度」と言った分
類で分けて書き出した方がわかりやすかもしれません。

 要は経営・事業の動きと照らし合わせながら、どの人材開発施策が有効であ
ったかを振り返ることが一つのポイントとなります。
 例えば5年前に実施した○○研修が、数年後または現在の経営に良い影響を
与えているか?与えているとすれば、どのように与えているかを検討します。
個別の施策良し悪しではなく、必ず経営・事業にどのような影響を与えている
かという視点で考える必要があります。

 経営計画・戦略と照らし合わせて人材開発を考えることは基本中の基本です
が、実際はあまりできていない組織も多いようです。採用や研修の方法論だけ、
例えば採用の実績・人数や研修のアンケート結果だけを取り上げて、良かった
悪かったと評価しているケースがまだまだ多いようです。その方法が悪いと言
うわけではありませんが、やはり中期ぐらいのスパンで見なければ、評価でき
ないこともあります。
 評判の良かった新入社員が3年経過してほとんど定着していないようであれば
(勿論定着すれば全て良いと言うわけでもありませんが)、本当に良かったど
うかはわかりません。いずれにしても、経営・事業への影響について、たくさ
んの意見を拾い集めることをお薦めします。

 勿論、過去の分析だけでなく、次のステップでは、未来・中長期のイメージ
を描いていきます。過去→現在→未来と言う形で、経営・事業の変化を見据え、
直近の人材開発課題(テーマ)を整理します。このサイクルを回していくこと
で仮説・検証が行い易くなります。

 ビジネスのライフサイクルが短くなればなるほど、逆に過去を分析するにし
ても未来を予測するにしても中長期的な視点が必要です。そういう視点を持っ
ていないと、目前の変化に右往左往し、有効な施策が打てなくなります。
 人材開発担当部門においては、絶えず経営・事業の行く先を見据えながら、
場当たり的ではなく臨機応変に人材開発を検討していくような姿が益々求めら
れるのではないでしょうか。


             (2011/11/28 人材開発メールニュース第656号掲載)
                          humanize:吉次 潤


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