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育てながら勝つは難しいのだろうか
 少々、旧聞を交えた話題で恐縮だが、9月に目標の2勝には達しなかったラグ
ビーワールドカップ日本代表と、夏の甲子園・高校野球準優勝青森・光星学院
野球部の共通項はご存じだろうか。

 多くの方がご存じだとは思うが、どちらも「外人部隊」が主のチームで、日
本代表、青森代表と本当に言えるか疑問を感じる選手構成なのである。

 光星学院の優勝メンバー・レギュラー9人中、大阪出身が7人、他の2人も和
歌山県、沖縄県からの野球留学生である。ベンチ入りした20人の選手の中で、
青森県出身者は3人、大阪出身者は10人。まるで「大阪代表Bチーム」のよう
である。

 一方、ラグビーWカップ日本代表30人のうち、10人(1人ケガで離脱、日本
国籍取得者は5人)、初戦のフランス戦ベストメンバーのスタメン15人中、6人
が外国出身である。以前から私も感じていたのだが、「日本代表」とはいいな
がら、外国人ばかりが目立つことに違和感を覚える人も多いのではないだろう
か。

 助っ人、外国人(国内外)に頼るのは、基本は『勝利至上主義』であろう。
勝つためなら、ルール違反でなければ何をしてもいい。強ければいいという考
えもあるだろうし、例えばラグビーで言えば目標の2勝ができなければ(結果
は1分け3敗)「何のために…」となるだろうし、勝ったとしても「日本が勝っ
た」「日本が強くなった」といえるだろうか、評価は分かれるところだ。

 例えば、夏の甲子園で大躍進した秋田県代表・能代商業は、秋田県勢がなか
なか甲子園で勝てない状況を憂えて県高野連が掲げた「5年以内に甲子園ベス
ト4」プロジェクト(今年始まったもので、これだけが理由ではないが)で、
中学時代から硬式球に慣れる機会を得て成長したとされている。ちなみに、同
校野球部員71人はすべて地元中学校出身だとのことで、もちろん野球留学生が
多く占める学校は光星学院だけではないだろうが、やはり際立って多いという
しかない。学校所在地と選手構成は別のものと言わざるを得ない。

 勝利至上主義、成績至上主義、結果至上主義は即戦力が主になり、時間をか
けて育成する観点が失われがちである。
 「育てながら勝つ」は難しいのだろうか、と、疑問の秋である。企業の若手
育成にも通ずるものを感じる。


             (2011/10/24 人材開発メールニュース第651号掲載)


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