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一つのメッセージで変わる企業イメージ
 イメージが良く好印象を与えている企業はたくさんある。しかし、別の角度
から見ると、本当の体質が伝わる企業が多いのではないか。

 東京都下で「町の電化屋さん」的きめ細かなサービスで業績を伸ばしている
有名な家電販売店、私が踏みきり待ちをしていると、横に派手なシマウマ模様
の車が止まる。踏切が開き、歩行者が踏切を渡り始めた途端、次の警報が鳴り
始めた。人間でも足早に歩いてやっと踏切を渡れる間隔なのに何と遮断機が降
りかけているにも関わらず、そのしまうま模様の車は踏切に突入してくるので
はないか。案の定、遮断棒は降りきり車が取り残された。慌てたのは私も含め
た周りの人間。私も含めて何人かの男性が駆け寄り遮断棒を上げる。あわや大
惨事!を免れ、車は無事、踏切から脱出する。

 ここで期待してはいけないのだろうが、客商売の会社でもあるし、慌てて車
から運転手が降りてきて「ありがとうございました。助かりました」くらい言
うものと思っていた。

 ところが、少し先で車は止まり、若いユニフォーム姿の男性が降りてきたが、
手に荷物を抱え踏切救出劇を手伝った7−8人に目もくれることなく、さっさと
納品先であろうビルに入ってしまった。その瞬間の、何とも言えない空気が漂
う。そこにいる7−8人がすべて異様なものを目にしたように一瞬、立ち止まり
そして異様な模様の車を眺める。「電化の○○さん、ここからは絶対買わない」
と誓うように。ちなみにこの会社、商工会議所から経営の賞を授与されたそう
だが、私からも与えたい。「踏切突破社員がいて、親切を無視する勇気ある社
員のいる会社」賞を。

 ついでにもう一つ。出張のとき東海地区でテレビを見ることが多い。地銀N
行のローカルCMを見る。ローン相談か何かをした後、客が銀行を出る際に相談
相手の行員に深々と頭を下げるシーンが映される。もちろん、親切に相談に乗
ってくれた感謝の意もあっての態度であろうが、行員がそれを受け止める態度
がこの銀行の体質に感じる。普通、お客さまが頭を下げれば「頭を上げてくだ
さい」や、自分がもっと下に頭を下げるのだろうと思う。
 ところが、この銀行は平然と受け止めて、私には「融資してやるよ(あるい
は、これから審査だからわからないけどな)。」と心で思っているように見え
てしまう。広告会社から企画なり、絵コンテを持ち込まれたときに、これはお
かしいと思わないのだろうか。いや、本当にこういう体質だから、気が付かな
いのかもしれないし、広告会社もこの銀行の体質に合った企画を持ってきたの
かもしれない。

 どんなに良いイメージを作り業績を示しても、垣間見えるその会社の体質や
本質、社員やメッセージの一つひとつがあっけなく覆してしまう。


             (2011/07/04 人材開発メールニュース第636号掲載)


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