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大震災と就職活動
 大学生の就職が本当に厳しい。それでなくても、今期は最悪の就活状況にな
るのではと予想されていたが、この大震災でその状況は更に厳しさを増したと
いってよい。

 未曾有の大災害は、従来の常識や経験を何一つ役立たせてくれない。もちろ
ん、企業側サイドでは、そんな状況の中でも総力を挙げて着実に復旧や再構築
に向け歩を進めている。壊滅的な打撃を被っても安全さえ確保されれば、時間
をかけて復旧できると立て直しも可能、場所を変えることもできる。あの福島
第一原発であっても、一喜一憂しながらでも、現状より悪化しないだけの手は
打てる。

 被災地、被災者である学生は当然のことだが、被災地から遠い地に住んでい
る学生にとっても就活への影響は大きい。何せ、大半の企業の採用活動がスト
ップした。安定するまで無期限停止状態の企業も多く、採用そのものがなくな
った企業もある。そして、被災者や被災地の学生との公平感を保つための選考
の延期再募集・再選考、何もかもが異例で、想像外、知識・経験の埒外の事態
の連続でもある。多くは、その場で立ち尽くし、途方に暮れる。

 例年、教えている大学で、5月に入って緊急の就職相談会を校内で開いた。
「どうしていいかわからない」と訴える学生が続出、中には「いざ、本番!」
と意気込んで臨んだところ、中止、中断の連絡が相次ぎ、「モチベーションが
一気に下がった」と、就活を中断した学生もいた。また、「震災で苦しんでい
る学生がいるのに、自分たちだけ就活をしていいのか」と悩む学生もいた。そ
れぞれがさまざまな苦悩の中にいた。

 それでも困難に立ち向かわなくてはならない。震災に遭った学生が、甘えず
に前に進んでいる以上、泣き言は言ってはならないのだ。

 やがて、この学生たちが、この10−20年の新しい街作りの中核になる。ここ
を乗り越えることが、日本再生の第一歩であることは確かだ。ここでも、ちっ
ぽけで情けないレベルだが「私にしかできること」を精一杯、彼ら彼女らに提
供していくことが「私のできる」ことである。


             (2011/05/23 人材開発メールニュース第630号掲載)


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