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悔しさと諦めの境界線
 先日、ある企業の人事教育担当者の方と話している時に、若手社員の育成が
難しくなった、特に「悔しさと諦め」の境界線がわかりにくくなったと言う話
題になりました。

 悔しさと諦めの境界線とは、何か失敗をした時、また叱られた時に、悔しい
と思って次に挑戦するのか、ダメだと諦めて挑戦しなくなるのか、その境界線
を意味しています。悔しいという気持ちは、動機付けの一つの大きな要素にな
ります。悔しい経験を通して乗り越えようと思う人もたくさんいます、また早
々に諦めて「できません」を連発するような人もいます。

 前述のわかりにくくなったと言うのは、特に若手の方については、悔しいの
か諦めているのか見え難い、表現することが少なくなったという話が出ていま
した。

 確かにそう言われると、感情の表現については、少なくなったのかもしれま
せん。ただ、感情を読み取るほどコミュニケーションを取っているのかという
と、ファイス・トゥ・フェイスで向かい合う時間そのものが少なくなっている
ように思われます。感情の表現が少ないと言うよりも、感情を把握する時間や
機会が減っているようにも感じます。

 当然、人それぞれ「悔しさと諦め」の境界線は異なります。部下の指導や育
成を進めていくためには、失敗も経験させながら「悔しさと諦め」の境界線を
上手くコントロールしていくことも必要です。逆に言えば、その境界線をある
程度把握できているようであれば、効果的な育成が期待できます。

 業績が悪い企業ほど、組織内のコミュニケーションが悪くなっているという
話を良く聞きます。そういう場合、コミュニケーションの質を問われるケース
が多いのですが、実際は圧倒的に量が不足していることがほとんどです。若手
社員の「悔しさと諦め」の境界線以前に、育成する側・指導する側の境界線も
今一度確認すべきではないでしょうか。


             (2010/12/13 人材開発メールニュース第609号掲載)
                          humanize:吉次 潤


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