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ジョブカード制度の事業仕分けについて
 先月行われた事業仕分けにおいて、「ジョブカード制度」の廃止が決定され
ました。

 ジョブカードは、雇用促進政策の一つですが、基本的な考え方は、人口減少
化の社会において持続的な経済成長のために一人一人が能力を発揮できる社会
を実現する、そのために能力本位の労働市場の確立を目指すものです。
 能力本位の労働市場=年齢、性別、学歴、等ではなく、能力によって採用や
処遇が実現される労働市場を目指してると言えます。

 能力本位の労働市場を確立するために、1.ジョブカードを活用したキャリア
コンサルティングの普及、2.企業が求職者に実践的な訓練機会を提供、3.汎用
性のある評価基準に基づく能力評価、を推進していくことが本来の趣旨です。

 そういう意味では先月の事業仕分けでは、本質的な議論が少ない印象を受け
ました。ジョブカードという形式(ファーム)がどうこうと言うよりも、本来
の目的である能力本位の労働市場構築に寄与しているかどうか、上記のキャリ
アコンサルティングの普及、訓練機会の提供、汎用性のある評価基準の普及、
という観点での議論が少なかったと言えます。ジョブカードと従来の履歴書・
職務経歴書の対比という議論もあったようですが、その辺りは当初から想定さ
れていた内容だったと思われます。

 決して今の制度が良いと言っているわけではなく、一人一人が、一人でも多
くの人が能力を発揮する機会が増えるようになるためには、既存の枠組みに囚
われることなく、絶えず変えていくべきものだと考えています。ただ、本質的
な効果の検証がないままに、その時々の効率だけを追求していくと、一番困る
のは求職者を支援している現場です。現場が疲弊してしまうと、どんなに良い
政策が打ち出されても運用が難しくなるのではないでしょうか。

 今後は、ジョブカードというフォームは無くなるかもしれませんが、新たに
創設予定の求職者支援制度の中に、表書きを変えて?訓練や能力評価のスキー
ムが構築されると予測しています。結局、強化・継続していくことを、敢えて
廃止だとアピールすることの意味は?何となくすっきりしないですね。


             (2010/11/08 人材開発メールニュース第604号掲載)
                          humanize:吉次 潤


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