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暑い夏と言えば「怪談話」
 メールマガジン読者の皆様、暑中お見舞い申し上げます。
 今年は、梅雨明けから太陽ギラギラ、酷暑ともいうべき熱い(暑い)日々が
続いております。くれぐれもお体、ご自愛ください。

 暑い夏と言えば「怪談話」。背中ゾクゾク、NHK連続テレビ小説「ゲゲゲの
女房」の視聴率アップに向けて、NHKニュースで「今、日本は妖怪ブームであ
る」と堂々と報道番組を番宣に利用する姿勢に寒々しい気分になったが、やは
り夏は恐〜い話が風物詩でもある。私自身、ホラー系の本や映画はほとんど縁
がない人間だが、寝苦しい夜を過ごしている同じ皆様に、ちょっぴりヒンヤリ
する情報提供を。

 「かたばみ歌」(新潮文庫)という本、ご存じの方も多いと思う。
 朱川湊人(しゅかわ みなと)氏著。朱川氏は「花まんま」(文藝春秋)で
05年に直木賞を受賞した作家である。今、首っ引きになって読んでいる。

 朱川氏は「ノスタルジックホラー」という分野に属し、昭和30年〜40年代の
東京下町を舞台とした怪奇現象・ホラー小説を世に出している。昔懐かしい町
並み、風俗風物が描かれた「映画・三丁目の夕日」的な街を舞台に、「映画・
20世紀少年」のトモダチが登場してくるような錯覚をしてしまう世界にずんず
んと引き込まれる。決して派手さはないが、最後のどんでん返しも含めゾクッ、
ヒヤッとさせる設定と、人の心に潜む怖さ、哀しさが表現される。そのくせ、
数多くの登場人物に邪悪さや狡猾さを感じさせない、読後にさわやかさ(ホラ
ーに“さわやか”もないものだが、ゾッとする結末もあるが、なぜか、ほのぼ
のさも感じてしまうホラーワールドである)すら感じてしまう摩訶不思議さが
ある。ホラーだけど癒される作品、といったら言い過ぎだろうか。

 前述した二作品の他、「いっぺんさん」(実業之日本社)、「白い部屋で月
の歌を」(角川ホラー文庫・日本ホラー小説大賞短編賞受賞作品)、「さよな
らの空」「わくらば日記」(角川書店)など、「都市伝説セピア(フクロウ男
収録)」(文春文庫)など多数。読み終わった後に、心地よい冷気が体を流れ、
確実に周囲の気温と体温を一度は下げてくれる作品である。
 是非、読んでいただき涼しい夜をお過ごしください。


             (2010/08/02 人材開発メールニュース第591号掲載)


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