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氏より育ち
 「氏より育ち」…このところの歴代の総理大臣を見ていると、こんな言葉が
頭に浮かぶ。小泉純一郎氏、安倍晋三氏、福田康夫氏、麻生太郎氏、そして鳩
山由紀夫氏。皆、二世もしくは三世の世襲政治家であり、大半が政治家の子ど
もとして恵まれた暮らしをしてきた人ばかりだ。

 誰一人、「極貧から…」「地方政治家から…」「学歴も…」といったエピソ
ードを聞くことはない。それ以上に、華麗なる一族に属する人もいる。ちなみ
に、たちあがれ日本共同代表・与謝野馨氏は祖父母に与謝野鉄幹・晶子をもち、
自民党総裁・谷垣禎一氏、みんなの党・渡辺喜美氏も二世議員だ。新党改革の
舛添代表くらいが二世議員でないくらいだ(もちろん、共産党、公明党、社民
党もその限りではない)。

 「氏より育ち」はご存じのように、「家柄や身分よりも、育った環境やしつ
けの方が人間の形成に強い影響を与える」ということだが、どうやら日本、と
りわけ政界では「氏」が先に立っているような気がする。「氏」を基盤として
ではなく、自民党総裁・総理大臣を射止めたのは小泉氏くらいしかいないだろ
う。しかし、その小泉氏も息子の「氏」を優先して地盤を渡しているのは何と
も情けない。

 結果、修羅場もくぐったこともなく、庶民の生活も知らない(知ったぶりは
上手い)総理大臣が続々と輩出される。漢字を読めない・空気を読めない・経
済知らない人や、すぐにお腹を壊して敵前逃亡する人、「私はあなたとは違う
んです」と70歳を過ぎて逆ギレする人、母親から億単位の小遣いを60歳過ぎま
で貰っていながら「国民の生活が第一」「コンクリートから人へ」と平気で言
える人…本来なら偉大な指導者として尊敬を一身に受ける人たちが、存在だけ
でも子どもたちの教育に良くない人ばかりである。

 「最低でも県外」はまた元に戻り、「自然への冒涜」は「県民への冒涜」で
あることも気が付かず、「五月末の決着」は、どの人が言った言葉なのか。空
しい。

 どうみても“氏”だけで総理大臣になった人も、その任は重すぎたようで、
一年も持たずに混乱のみを残して辞任した。次の人は、“氏”だけでなく「育
ち」で日本を力強く主導してもらいたいものだ。


             (2010/06/07 人材開発メールニュース第583号掲載)


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