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新入社員研修の現場から・2010年春
 今年の新入社員研修をみて、改めて思ったことがある。日頃、就活の指導で
大学生と接していてモヤモヤとして感じたことだが、「個性本当にが無いなぁ」
という印象である。

 そういえば、相変わらず年間延べ1000人近くの学生に模擬面接をしても、こ
の2〜3年、印象に残る学生が少ない。皆、顔も体格も違うのだが、記憶に残ら
ない。同系色のリクルートスーツで没個性化しているのかもしれないが、自己
PRを聞いていても似たり寄ったり、エピソードも平板・平凡、立ち居振る舞い
を見ていても「こいつ、尖っているなあ、個性的だなあ」と感じる学生がほと
んどいない。新入生も同じ。

 個性的といえば、バンクーバー冬季五輪スノーボード日本代表の国母選手の
話題。バンクーバー入りする際、日本選手団の公式ブレザーを着崩し、ズボン
は「腰パン」、シャツを外に出しネクタイはダラダラ。頭はドレッドヘアー、
顔には黒いサングラス…ここでも個性が話題になった。

 ちなみに、個性とは広辞苑で引くと「個人に具わり、他の人とは違う、その
個人にしかない性格、性質」を指す。

 しかし、日本選手団の公式ユニホームを着ていることは別にしてズボン「腰
パン」、シャツを外出し、頭はドレッドヘアー、顔に黒サングラス…の若い人
は街にごまんといる。加えて、一連の報道でスノーボードの専門家にいわせる
と、国母選手の服装や着こなしは「スノボ選手らしいといえば、らしい服装」
「定番」なのだという。何だ、個性的ではなくて、どちらかと没個性的、周囲
(若者、みんなと一緒、スノボ世界)迎合的着こなしじゃないかと思う。

 国母選手は周囲と同調的、個性を殺して行動しているのだから、公式ユニホ
ームの着方をみんなと一緒的にすればと教えてあげれば済んだ話のように思う。
その一言がなかったので、国母選手の意に反してニュース報道のカメラに映っ
てしまったのではないか。加えて、国母選手を取り巻く大人たちも実に没個性
的、選手村入村式への参加を自粛させ、誰が見ても本心から反省していない記
者会見で謝罪させるのも工夫がない。

 一方で、記者会見では記者に質問されて「チッ、うっせーな」と小声でつぶ
やく場面、「反省してま〜す」と火に油を注ぐような対応―これは個性的だっ
た。普通は、あの場面ではそうはしない。この人にしかできない性格、性質が
色濃く打ち出さされていた。願わくば「メダルは必ず取る!だから黙っていろ」
と、威勢の良い言葉を記者団に宣言して立ち去って欲しかった。


             (2010/04/19 人材開発メールニュース第577号掲載)


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