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作文について・就職活動編2
 学生の就職戦線の厳しさを受けて、早め早めに就活をスタートする学生(主
に非常勤で教えている大学の学生であるが)の自己PRや志望動機、あるいは、
エントリーシートの記載事項をメールでのやり取り中心だが、添削指導してい
る。昨年12月から1月末まで100本くらい見ただろうか。

 そんな中、年末押し詰まって届いたメールを開けてドッと気分が滅入ってし
まった。女子学生の自己PRなのだが、その内容は高校時代に二度自殺をはかり、
その苦しさを乗り越えて今があることを延々と綴ったもので、仕事も大掃除も
終わって正月の楽しいひとときを過ごそうとした気分にいきなりバケツ一杯の
冷水を浴びせられたような状態になってしまった。

 その女子学生は確かに講義中から挙動不審というか、多くは私の前のテーブ
ルで、私の授業がそれほど睡眠に良いのかと思うくらい、幼気な姿?で爆睡し
ているのを見て、変な子という印象はあった。何せ、口を大きく開けて、時に
はよだれを垂らして寝ている姿は、私の講義へのモチベーションを奈落の底に
おとしめたくらいインパクトがあった。後で聞くとすべての授業で同じらしく、
ホッとしたが、集中力・持続力とも大きく不足して、緊張を維持できないきら
いがあるという。

 その学生からの自殺の告白とそこから立ち上がる物語…自分中心の記述が続
き、どうしても共感できない。それ以上に就活ネタとしてはふさわしいわけが
なく、「もっと前向きな話題を…」と返信した。

 すると、一月一日元旦の夜にメールが飛び込む。恐る恐る、やや酔眼でメー
ルを開けると、そこには「美少女フィギアと私」的な、本当に前向きで明るい
ネタで自己PRが書いてある。いかにそのフィギアが着る下着に凝り、フィギア
の体型を最大限にアピールするための工夫が、まさに私の思考の枠から大きく
外れるワンダーランドが楽しそうに展開していた(と思う)。

 昼間の酒も手伝ってか、私の頭はガンガンと除夜の鐘の早打ちのような音が
鳴り響き、パソコンを投げ出してこの事態から逃げようとも思ったくらいだ。
 しかし、そこは大人?フィギアの説明や描写はほどほどに、フィギアへの打
ち込み度合いを「学生時代に打ち込んだこと」に使用し、自己PRは「凝り性」
「一つのことをとことん研究する」といったもので展開したら…とアドバイス
を送る。うーん、これでいいのだろうか。元旦の夜に悩むことなのか。

 そして、今も不毛とはいわないが、フィギアを媒介にしたメールのやり取り
は、続いている。


             (2010/02/08 人材開発メールニュース第567号掲載)


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