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作文について・就職活動編
 今年一発目のコラムが作文、具体的な文章を書くということだったので、今
回も引き続き文章ネタでいきたい。

 先般の自己PR、志望動機、学生時代に打ちこんだことなどの文章を学生に書
かせていると、共通項とまでいかないが同じような書き方に遭遇する。

 それは体育会系でもサークル系でもいいのだが、スポーツ、例えば、野球、
サッカー、バスケットボール、バレーボール、ハンドボール、ソフトボールな
どの選手の文章で、自分のポジションを書かない学生が圧倒的に多いというこ
とである。また、野球で言えば走攻守、試合でもでれば個人成績が記録される
のだろうが、そのことに言及する学生も皆無である。

 書かれる記述は「高校時代、○○大会準優勝」「○○地区二部リーグ昇格」
と大学時代とは関係ないものも含め、チーム成績しか書かないのである。その
成果を挙げるため、自分がどのように個人として貢献したかも書かれている例
は少ない。ほとんどがチーム内に埋没、その他大勢になっている。

 役割やポジションは野球ほど固定されていないとはいえ、サッカーと言えば
GK・FW・MF・DFと分かれ、チーム戦術にもよるが、攻撃的MF、守備的MF、ワン
トップだ、ボランチだ、FWでもウイングとセンターの動き、役割が違うくらい
素人の私でもわかるのに、自分の役割が何でその使命をどのように果たしか、
より上質なプレーをするための工夫だ、努力だといったことすら教えてもらえ
ないのだ。それは、彼ら彼女らは大切なことではないと思えてならない。

 ちなみに、相変わらず自己分析の一環で「自分を動物にたとえたら」と言う
お題で文章を書いてもらっている。ここでも不可思議な現象が見られ、例えば
「私を動物にたとえたら鳥(魚、草食動物)です」と、鳥の中で、魚の中で、
草食動物の中で「何」と、特定できない学生の増加も悩ましいところだ。

 ここでも、動物の中でのその他大勢、鳥、魚、草食動物の中に埋没してしま
って「この人」が見えない。ネット社会の進展に伴って、姿形は見えていても
「匿名」で世の中と接していることが背景だと思えてしまう。そして、そんな
学生を採用する会社はあるのか…考えてしまうのである。


             (2010/01/25 人材開発メールニュース第565号掲載)


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