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リーダー待望論?
 政権交代が現実的になり、期待と不安が混在しているような感じですが、混
沌としている状況においては、リーダーの登場が待ち望まれる傾向が強いと言
えます。

 企業経営・人材開発の現場においても、先行きが見えない状況になればなる
ほど、リーダー待望論が勢いを増します。実際私の周りでも、リーダーが欲し
いと言う話題は、頻繁に出てきます。しかし、少し詳しく観察?すると、組織
の誰が言っているか、誰がよく待望論を口にしているかによって、少し意味合
いが違っているように感じます。

 以前から多いのは、経営者や経営幹部がリーダー待望論を唱えるケースです。
現場を引っ張っていく人材が欲しい、経営者・経営幹部が持つ構想・イメージ
を具現化してくれるリーダーが欲しいというケースです。トーンは様々ですが、
経営上の課題解決を実行するためにリーダーが必要だという意味で使われてい
ることが多いと言えます。

 最近少し気になるのが、待望論が「現場から」と言うケースです。経営者や
経営幹部よりも、現場での待望論が大きいというケースです。現場から聞こえ
てくるリーダー待望論は、担当する仕事や所属する組織に対する不安・不満が
増加すると、自然と発生します。経営者・経営幹部が言っているのと、さほど
変わらない感じも受けますが、裏を返せば、待望論が多い現場は、他人任せの
雰囲気が強いところが多いようです。自分ではなく、誰かが変えてくれるのを
待っているという感じでしょうか。

 現状を変えるのは自分ではなく、現状を変えてくれる誰かが登場するのを待
っている。自分がリーダーシップを発揮するのではなく、誰かが発揮するのを
待っている。誰もリーダーを目指さない…残念ながら、そういう雰囲気の職場
が増えているように思えます。待つ人が増えれば増えるほど、活気が失われて
いくのも当然のことです。

 どうやってリーダーを育成するかという議論は多いようですが、そもそもリ
ーダーを目指す人・なりたい人がどれぐらい存在するかを把握しないまま議論
が進められていることも多いようです。“リーダーを目指す人が存在する”と
いう条件と“リーダーを目指す人が存在しない”という条件では、立案される
(立案できる)方法論は大きく異なります。

 当たり前のことではありますが、リーダーを育成する前提として、リーダー
を目指す人が増える(増やす)環境づくりを進めていくことも、人材開発を担
う部門・担当者に課せられた大きな役割の一つであると言えます。


             (2009/09/14 人材開発メールニュース第547号掲載)
                          humanize:吉次 潤


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