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再構築と葛藤
 野球の世界では、より強いチームをつくるためにコンバート(ポジションの
変更)をすることがあります。例えば、外野手を内野手へ、投手を打者へ転向
させるケースもあれば、投手で先発していた人が抑えに回ったりすることもあ
ります。

 コンバートは成功することもあれば失敗することもあります。プロの選手で
あれば、特に実績がある選手ほど、当然プライドやこだわりを持っています。
コンバートは、場合によっては、これまでやってきたことを捨てる決断も伴い
ますので、命令する側(監督)、命令を受ける側(選手)いずれにおいても、
葛藤が発生することが多いようです。ただ、成功例に多く見られるのは、コン
バートの話が始まった段階では、両者共に意見が異なっていたとしても、いざ
決断した際には、お互いに成功するイメージを共有して進んでいることが多い
と言えます。
 逆に、お互いに食い違った状態が続くと、実力を発揮する以前に、やる気を
失い、ひどい時には双方が批難し合うようなこともあり、当然良い結果は生ま
れません。

 最近、企業の中でも同じような話を聞きます。経営環境の変化に適応するた
めに、組織を再構築する動きが増えています。ハードとしての組織を変えてい
く過程で、当然、そこで働いているメンバーのポジションも変わります。個人
のやりたい仕事と企業・組織から期待されるミッション・担当業務のミスマッ
チが増えているようです。変化に適応するために、組織の形を変えるわけです
が、いざ人材を振り分けて見ると、個々のメンバーの納得度・満足度は必ずし
も高いと言えないこともあります。
 個人側では、はっきり不満を表明するメンバーもいれば、不満を表に出さず
に溜め込んでいるようなメンバーもいます。いずれにしても形は変えたが、個
々のメンバーのやる気を損なう体制変更であれば、期待される成果は生み出せ
ないと言えます。

 こう言うと、組織を再構築することを否定しているように思われるかもしれ
ませんが、そうではありません。より良い方向に進んでいくためには、どのよ
うな時代でも絶えず再構築を続けていく必要があります。ただ、これまでやっ
てきたことを変えることは、仕事に限ったことではなく、抵抗や葛藤が発生す
るのは当然のことです。発生した抵抗や葛藤をどう収斂させていくかが大切な
ポイントです。

 変化が大きければ大きいほど、組織対個人、個人対個人、組織対組織、様々
な場面で葛藤が大きくなることが予測されます。それをどう収斂し経営・現場
の推進力に変えていくかは、どのようなマネジメントを行うかに依ると言えま
す。元気の良い企業(組織)ほど、葛藤の存在を認め、正面から受け止め、し
っかり話し合っているように見えます。逆に元気がない?企業ほど、葛藤があ
るにもかかわらず、誰もが見て見ぬ振りをしているような感じです。
 葛藤を把握し、葛藤についてコミュニケーションを図り、解決に向けて動き
出すことが、マネジメントが機能している証左であると言えます。組織で発生
する葛藤をどう処理するか〜マネジメントの真価が問われていると言えます。
皆さんの周りでは、どのような葛藤が発生していますか?


             (2009/02/02 人材開発メールニュース第517号掲載)
                          humanize:吉次 潤


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