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何故、新卒を採用するのか?
 先行きが見え難くなっている中で、来年以降の新卒採用をどうするかという
話題が増えているようです。採用数を減らすもしくは採用をストップするとい
う話題が多い傾向ですが、逆に増やすことを検討している企業もあり、様々な
状況です。

 改めて、新卒採用に対する考え方=人に対する考え方が問われている印象を
受けます。「何故、新卒を採用するのか?」シンプルな問いかけでありますが、
深い意味を持っているように思われます。

 「何故、新卒を採用するのか?」…私がお手伝いしているある企業では、新
卒を採用することは、「既存社員(特に若手社員)の成長を促すため」、そし
て「既存社員の成長、組織としての活性化を含め、企業として常に生産性を高
める努力を継続するため」と意味づけて採用を展開している企業があります。

 その企業では、毎年少数ではありますが、継続して新卒を採用しています。
併せて選考する過程においても、来年どんな人材が入ったら、今の新入社員〜
若手社員の刺激になるかという視点で採用を進めています。従って、既存社員
のレベルアップにつながらないようであれば、他社で数多く内定を獲得してい
る優秀な学生?を落とすこともあります。
 選考基準が、一般的なビジネスの基本スキル?が高い・低いと言う採用候補
者(学生)のランキングではなく、現場への影響力という視点で採用している
感じでしょうか。採用数が少ないためにできることかもしれませんが、絶えず
現場のため、既存社員の成長のためという考え方を貫いています。
 結果的には、直近5年で30名近く新卒を採用していますが、誰一人退職する
ことなく着実にキャリアを形成している状況です(組織運営という視点で考え
ると、まだまだ改善すべき点はありますが…)。

 冒頭の話に戻しますと、新卒採用を減らす、採用をストップするという話題
が増えているのも事実です。しかし、減らすこととストップすることの意味は
大きく異なります。採用業務という点で考えれば、減らす場合は、減らすと言
っても一連の採用プロセスを回す必要があるため、さほど業務量、採用にかか
るマンパワー、コストを縮小することにつながりません。一方採用をストップ
すれば、当然採用に関する業務量、マンパワー、コストを大きく削減すること
も可能です。

 しかし、新卒採用をストップすると、ただ単に新卒者がいないというだけで
なく、既存社員の成長にブレーキをかける可能性、組織全体の成長や組織の持
つノウハウの伝承にブレーキをかける可能性もあります。

 各企業が置かれている環境は異なり、一概に新卒採用を進めているわけでは
ありませんが、新卒採用の見直しを行われる際には、もう一度「何故、新卒採
用をするのか?」を考えることも必要ではないでしょうか。


             (2008/11/10 人材開発メールニュース第506号掲載)
                          humanize:吉次 潤


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