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小泉さん、あなたもか!
 「小泉さん、あなたもか!」
 11月にも実施される次の衆議院選挙に、小泉元首相が出馬せず引退するとい
う。引退そのものは何ら問題ないし、さっさと自らの5年間の首相時代の功罪
を総括して隠居生活を送ればいい。しかし、マスコミ等で巷間伝わるところで
は、二男を後継にするという。こういうのを「潔い引退」というのだろうか。

 「自民党をぶっ潰す!」と絶叫し総理・総裁の座を射止めた小泉さんも、最
後は最も自民党的な地盤を子どもに継いで引退という形をとる。「既得権益の
壁に怯まず」は「既得権益を大切に息子に継ぐ」であり、「人生いろいろ、会
社もいろいろ」も「息子だけは他の自民党議員と同じ」ということ。「親ばか」
と発言していることだが、変人は変節の人という意味だろう。

 国会議員、特に自民党の国会議員の席は世襲制に近い。現在、衆参の国会議
員には祖父や父親が国会議員だった人が約180人ほどいるらしい。その中で、
自民党議員は約150人、4割に達するという。直近の総理大臣を見ても、小泉・
安倍・福田、そして麻生と四代続いて世襲議員、マスコミでは「毛並みの良さ」
ある大新聞では麻生新首相を「庶民の生活もわかるセレブ首相」と称していた
が、本当に庶民、下々のことがわかるかは疑問だろう。漫画の世界にはバーチ
ャルに描かれていてもリアルは感じない。ちなみに、麻生新内閣の18人の閣僚
中、11人が世襲議員(ちなみに、確信犯的失言ではなく無知的暴言で5日目に
辞任した中山氏は世襲ではなく、後任の金子氏は二世襲議員、結果、18閣僚中
世襲議員は12名)、今や国会議員だけでなく閣僚になるにも世襲が条件になっ
ているといってもいいくらいだ。

 「世襲だからダメ」と決めつけるつもりは毛頭ないが、地盤・看板・カバン
を用意してもらって、楽とはいわないまでもゼロからスタートしないで議席を
獲得できることは、本当に機会の平等なのかとも思ってしまう。

 議員の子は議員、俳優・女優・ミュージシャンの子は俳優・女優・ミュージ
シャン、教師の子は教師、医者・歯医者の子は医者・歯医者、役人の子は役人、
経営者の子は経営者…目に映る光景の大半はそうした世襲社会を示している。
そした富の集中が格差社会、階層社会を生んでいる気がするし、それぞれの社
会の中で金も名誉も人も循環している社会でもある。

 それは一部の人を除いて、大きな壁となって立ちはだかり、空しさだけが募
る。一部の政党代表が「麻生さんは明るい人柄で…」と前首相の暗い人柄と比
較して論評していたが、華々しく華麗な閨閥出身の新首相誕生を見ていて、す
でにそこに大きな影が見え隠れしている気がしてならない。


             (2008/10/06 人材開発メールニュース第501号掲載)


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