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2008年・新入社員研修の現場から
 5月GWともなれば、4月入社の新入社員は張りつめた緊張を解き、ホッと
して休みを享受していることと思う。新入社員ばかりではなく教育担当者もホ
ッと一息ではないだろうか。

 社会経済生産性本部が発表した今年の新入社員の特徴を表すキーワードは、
「カーリング型」らしい。売り手市場の時期に入社し、会社への帰属意識は低
いため、会社側が働きやすい環境作りに腐心する、というのが命名の理由との
ことだ。「氷の上を滑走する石のごとくスムーズに就職できた」彼ら彼女らは、
入社後は「方向を見定めてそっと背中を押す」ことが不可欠で、育成もカーリ
ング同様、ブラシで氷をこするのをやめると、減速や停止をしかねない、磨き
すぎると目標地点を越えてしまったり、はみだしてしまうということで、なか
なかブラシさばきならぬさじ加減が難しく、奥が深い対応を迫られそうだ。チ
ーム青森の苦労がよくわかる。

 今年も数はさほどではないが、数社の新入社員研修をお手伝いし、その中の
1社で、「1年後の自分」という目標設定を行ってもらった。その作成過程で
受講生の周りをぐるぐる回っていると、ふと気が付いたことがあった。それは
目標達成のための方針や計画の中に、「残業をしない」という言葉が多く見ら
れたことである。もちろん残業しないことは世の中の要請でもあるし、時流と
も言えるので残業を奨励するつもりは毛頭ないし、その心がけたるや賞賛すべ
きことと感じた。仕事の生産性を高めて定時で帰宅することは、それだけでも
あらゆる意味ですばらしいことだ。

 残業しない理由を数人の受講生に質問してみると「自分の時間を大切にした
い」「趣味やスポーツの時間を確保したい」という答えが返ってきて、いいこ
とだと思う反面、「残業していると上司や先輩に捕まって、飲みに連れて行か
れるのが嫌だ」「残業してまで仕事に関わりたくない」という返事には、いさ
さかたじろぐ。いずれにしても結構、冷めているなあという印象をもった。上
司や先輩との付き合いに関しては、「職場での人間関係で注意したいこと」と
いう問いに「ほどほどに付き合う」「あまり付き合いたくない」「うまく逃げ
る」といった回答をする受講生も多く見られ、同じような考えをもっていると
思った。濃密な人間関係を望むつもりはないが、上司や先輩に飲みにつれてい
ってもらい(もちろんご馳走になる)、その中で仕事やコミュニケーションを
学んだ自らの爛れた過去を振り返ると一抹の寂しさを感じる。

 扱いの大変さもよくわかるが、実は「冷たい氷のうえを冷めた石(心)が滑
走するカーリング」そのものでもあるような気がしてならない。


             (2008/05/12 人材開発メールニュース第481号掲載)


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