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新入社員研修と真剣に取り組む場
 今年も新入社員研修を担当させていただきましたが、当の新入社員よりも周
りの方々の手厚さ?が印象に残りました。採用難、労働人口が減少すると言わ
れる中で、大事に育てなければならないという風潮?か、例年以上に新入社員
に手厚く?対応している企業が多かったような印象を受けました(私の周りだ
けかもしれませんが…)。

 実際、ある企業の新入社員研修を見学していた時に、気になる場面がありま
した。そこでは、新入社員に実習を中心に課題を与え解決させるような進め方
をしていたわけですが、少し難しい課題が出された時に、これまで順調に課題
をこなしていた新入社員の動きが一瞬止まりました。どうするのかな?と見て
ると、その瞬間に講師側からすぐにヒントが提供されました。私自身「もう少
し待ってもいいのでは?、もう少し本人達に考えさせていいいのでは?」と内
心思いました。

 新入社員も難しい課題だと認識し、真剣に取り組もうとしていた矢先に、い
きなりヒントが提示され、拍子抜けしているようにも見えました。たしかに課
題をクリアしたことで得られる達成感があり、それでやり方は覚えることにつ
ながると言えますが、できたことを喜ぶだけでいいのか?と少し考えさせられ
ました。

 何となくではありますが、不安を抱えている新入社員に自信をつけさせるた
めに、つまづかせてはいけない、成功体験を積ませなければいけない、そんな
雰囲気が漂っている感じです。真剣に取り組む前に、周りが「難しく考えなく
てもいいよ」と言っている様にも見えます。本来、教える側が「わからなけれ
ば、聞けばいいから…」と言うのではなくて、新入社員に「わからないことは
聞く」という行動・姿勢を身につけさせることの方が必要だと思います。

 新入社員を大事に育てることに異論はありません。ただあまり周りが手をか
けすぎ、いわゆる過保護になってしまうと、自ら考えたり、取り組んだりする
ことができなくなるのではないでしょうか。
 子供が遊んでいる時もそうですが、熱中して真剣に取り組んでいる時は、集
中力が研ぎ澄まされ、主体的に情報を集め、判断します。情報が不足している
時には、本人が自主的に動き始めます。やり方・ノウハウを教え、早く戦力化
することも大事ではありますが、もっと「真剣に取り組む場」を提供し、見守
ってあげることも必要ではないでしょうか?


             (2008/04/21 人材開発メールニュース第479号掲載)
                          humanize:吉次 潤


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