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ハインリッヒの法則
 労働安全教育で良く使用される理論として、ハインリッヒの法則があります。
ハインリッヒの法則は、1:29:300の法則とも呼ばれています。
 ハインリッヒの法則は、1930年代にアメリカの損害保険会社でハーバード・
ウイリアム・ハインリッヒ氏が発表した論文で、労働災害の事例の統計を分析
し、導き出されたものです。具体的には、重傷以上の災害が1件起きる背景には、
軽傷を伴う災害が29件起きており、さらには事故には到らなかった危うい場面
=ヒヤリハット(ヒヤリとしたり、ハッとする危険な状態)が300件あるという
ものです。リスクマネジメントの視点で捉えると、ヒヤリハットを確実に減ら
すことが、軽度な災害、さらには大きな災害を防ぐ有効な方法の一つだと考え
られています。

 現在では、労働安全の現場に限らず、広く様々なビジネスで応用されていま
す。例えば、サービス業におけるクレーム対応の場面においては、顧客を失う
大きなクレーム(1件)の前には、顧客を失うまでには到らない様々なクレーム
(29件)があり、その前にはクレームに到っていない顧客の不満(300件)が存
在していると考え、クレームが発生したらどう対応するかではなく、いかにク
レームが発生しないように顧客の不満を拾い上げるかに注力するようなケース
があります。

 災害を減らす(防ぐ)クレームを減らす(防ぐ)いずれにおいても大事なこ
とは、ヒヤリハットや不満に代表されるような、災害やクレームになる前の情
報をいかに組織として共有し、課題化し、対策を立案するかがポイントなりま
す。わかっていることではありますが、ビジネスの現場においては、災害やク
レームになって初めて報告されるようなケースが多々有ります。担当者は「し
まった」と思いながら、大事に到らなかったので報告していないということは、
よくあることです。確かに報告しなかった担当者にも問題があると言えますが、
小さなことを拾い上げようとする組織(仕組み)が確立できていたかをチェッ
クする必要もあります。

 職場のコミュニケーションで大事なことは、小さな?情報をいかに拾い上げ、
流通させ、共有するかと言うことになります。しかし、小さな情報を共有すれ
ばするほど、組織は莫大な情報を抱えることになります。そこで、どの情報を
優先して流通・共有するかを優先順位を決めてマネジメントすることが大事に
なってきます。

 ハインリッヒの法則や災害やクレームを未然に防ぐといった話は、特段新し
い話ではなく、当たり前の事だと言えます。ただし、最近発生したイージス艦
の事故や企業経営においてコンプライアンスが問われることを目の当たりにす
ると、当たり前のことを徹底することの重要性を改めて痛感します。職場に眠
っている小さな情報をチャンスにするかピンチにするか、組織運営上の重要な
課題になると言えます。


             (2008/03/10 人材開発メールニュース第473号掲載)
                          humanize:吉次 潤


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