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専門学校生の退学防止
 どういう経緯だったか、どのように縁があったのかわからないが、昨年から
専門学校生の退学防止対策の仕事に携わる機会が増えてきた。といって、自分
が学生の前に座って退学しないように説得するわけでなく、専門学校の教職員
相手に退学防止策のヒントを話すくらいの仕事である。

 そんな能天気な意識で仕事を受けていることなどできないくらいに、多くの
学校現場では退学者が相次いでいる。専門学校生そのもののデータはないのだ
が、平成18年度の学校基本調査によれば、私立大学生の退学率は2.9%(国
公立1.6%)、退学率が5%を超える大学は2割117校に達するという。
それでなくとも少子化で学生の総数が減っていることを考えれば少ない入学者
からさらに退学者が出るのだから、学校経営には大きな問題であろう。ある試
算によれば、退学者による大学の損失は一人年額100万円として名目的には
550億円、4年間のどの時点で退学するかにもよるが、実質的には2倍、3
倍の本来、得られるべき売り上げの損失が出ているといえる。

 一方、退学理由の約2割が進路変更であり、他大学、専門・専修学校に進む
として100億から300億円がライバルに移っていることになる。これも由
々しき問題といえる。

 当然のことながら、退学防止には良薬、特効薬はない。専門学校であればク
ラス担任がいるしホームルームもあることで、学生との日ごろの接触機会・密
度は高い。その中で退学につながる予兆を発見できる可能性は高い。といって
も、実際の現場ではそうなるとは限らないが…

 反面、大学ではそうはいかない。ゼミやサークル、クラブなどに所属してい
る学生であれば、多少の相談に乗ることもあるだろうが、何にも所属していな
い学生や周囲との交流の少ない学生は、ほとんどノーマークになる。出席をと
る授業があったとしても、欠席している学生には単位は出さないとしても、さ
ほど周囲や教員には気にされないであろう。そうなると退学に至る予兆すら発
見できない。規定の単位を取らない、授業料を払わない、履修登録をしないと
いった具体的な行動に至るまで誰も気にも留めないのではないか。最も、大学
というところはそういうところ…と私も思っているが。

 いずれにしても、わざわざ入った大学(これも一部を除けば、ほぼ全入、わ
ざわざ入ったという感じもないのかもしれない)で、入学金、何年か分の授業
料を捨ててでも別の進路に向かう決意、意思決定はどのようになされるのかも
知りたい。いやなものはイヤ、もう決めたのだからいいのだ、と反発をくらい
そうだが、新たにやりたいことが見つかったことを良とすべきか、その点に悩
む。
 また、自らに重いテーマを課してしまったことを悔やむ。


             (2008/03/03 人材開発メールニュース第472号掲載)


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