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ラベルの中で生きていくことを憂う
 経済絶好調で求人倍率も高く一部売り手市場の東海地区・岐阜と、まったく
様相の異なる就職難地区・青森の二つの地域で学生に就職を教える。

 一方では、たまたま「生まれた時期と住んでいる場所」が良いばかりに、就
職することだけは楽な地域でのほほんと暮らしている学生たち、一方で「住ん
でいる場所」に工場や産業がないにもかかわらず、のほほんと暮らしている学
生たち、双方に説得力のある話をすることは難しい。

 それでも、青森の学生たちは約一年かけて、洗脳ともいえるくらい繰り返し、
何度も青森や地元だけでなく「仙台や東京を視野に」といい続けると、内定者
の半数が東京を含めた首都圏の企業という結果になる。

 数だけではなく、内定の質も格段に向上し県内企業での上場企業内定率は、
二割だったにもかかわらず、現四年生は県外ではあるが、上場企業内定率は五
割に上る。これまでには考えられないレベルの企業への内定も決まっているし、
警察官志望の学生も、警視庁にとどまらず神奈川県警、千葉県警と広がりが出
てきた。

 そんなことが影響しているのか、昨年実施した約五十人に対して行った私の
キャリア面談では、約半数の学生が県外就職やむなし、の意向を示した。変わ
れば変わるものであり、教育、いや、じわじわと行った洗脳の賜物かもしれな
い。結果として彼ら彼女らが人生の中長期的戦略を考えたともいえる。

 翻って、岐阜の学生たちは、環境の良さにどっぷりと浸かり、相変わらずの
地元志向、何せJRの快速で二十分、地下鉄を乗り継いでも三十分足らずの名
古屋市内への通勤でも「遠い」とぬかす。費用的な面から都内まで二時間の通
勤時間を費やす首都圏の会社員なんて日本人ではないと断言する。

 確かに地元就職は職住近接、車通勤で三十分が当然なのだろうが、転勤なし
を希望する彼ら彼女らは足に根っこが生えているように私の目には映る。それ
以上に、自分の人生の枠を自らが決め、限定しているようにしか思えない。

 それでも地元の有名企業に入って、周囲から一流企業勤めですねと評価され、
そこでの成果・評価は別として、「ラベル」の中で生きていく人生を選択して
いくことを憂う。これも一流企業や有名企業での勤務経験のない私の僻みなの
だろうか。


             (2008/02/18 人材開発メールニュース第470号掲載)


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