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2008年就職活動のこぼれ話
 これから約半年間、もうライフワークのようになった学生向け就職指導の佳
境期に入っていく。もう15年近くおじゃましている大学に事前打ち合わせに
行ったとき、もう内定を確保して気楽な学生生活をエンジョイしている教え子
たちが集まってきた。売り手市場も最高潮に達している東海地区の学生という
こともあり皆、複数内定をもっており、最終的に決めた会社へのちょっぴりの
不安がよぎるのもこの時期なのかもしれない。自然に話は盛り上がった。

 就職活動を振り返れば、環境はフォローの風が吹きまくり、中堅以下の企業
にいけば、「行けば内定」「座れば内定」「名前が書ければ内定」に近い選考
もチラホラ見受けられ、企業の足下を見た学生は内定を出されること自体、毛
嫌いしていた。そういう会社には、多くの辞退者が出たことが当然のように予
想される。

 そんな中、女子学生だが面白い話が聞けた。その学生、当初は製造業の事務
職希望で活動、2社ほどで内定をもらっていたが、少々、色気が出たのか、た
またまお誘いのメールが来た地方銀行を応募しようと行動した。

 応募メールから第一次面接まで時間的余裕もなく、ほとんど業界や職種の研
究もしないまま面接に向かった。面接では私と合宿などを通じて練りに練った
自己PRと学生時代に打ち込んだことを堂々と自信をもってアピール、その後、
自分に対する質問が繰り出されるが、これも自己分析をしっかりとやってきた
お陰でスラスラ、ところが、である。いざ質問内容が仕事研究や志望動機に及
ぶとトーンダウン、所詮、付け刃ではしどろもどろになるのも、これまた当然
の結果となった。

 ところが、である。2人いた面接官の一人が「あなた、銀行業界を全く勉強
していないでしょ」と言うと、面接会場にホワイトボードを持ってきて、なん
と約1時間にわたって銀行業界や仕事内容、採用職種の仕事について講義にな
った。当の学生はビックリしたが、ノートを取りだしてメモしながら熱心に講
義を受ける。

 約1時間後、講義が終わった面接官は面接官席に戻り、「どうですか。銀行
の仕事がわかりましたか」学生「はい、よくわかりました。ありがとうござい
ました」面接官「ところで、改めて銀行で働く気になりましたか」学生「とて
も魅力を感じます。勉強し直したいと思いました」面接官「それではここで内
定を出しますが、受けていただけますか」これには学生も更にビックリ。落ち
たと思っていたのと第一次で面接での内定だったので、その理由を聞くと「前
半の面接の受け答えで、ほぼ内定でした。あなたに是非、働いてもらいたいと
決めていました」の台詞。学生は感激して思わず「是非、お願いします!」と
叫んだのは言うまでもない。

 こうして製造業で内定を2社もっていた女子学生は、地方でも大手の金融機
関に内定を獲得した。当初は応募する気もなかった業界、企業である。
 今年も、学生と企業間で、どんなドラマ、駆け引きが生まれるか、楽しみで
ある。


             (2007/10/15 人材開発メールニュース第453号掲載)


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