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タイムマネジメントについて考える
 少子化に伴う新卒・中途採用の「売り手市場」の出現により、多くの会社で
採用増を目指していながら、人手・人材の確保がままならない時代になってき
た。その反面、業績・業容が拡大している企業は多く、現場は超多忙を極めて
いる。とはいうものの、ワークライフバランスも時代の要請であり、残業も労
務管理上抑制しなくてはならず、企業も働く側もジレンマ、トリレンマに陥っ
ている。

 そうした環境を反映してか、以前から研修を担当させていただいている企業
から「タイムマネジメント」の内容を研修に盛り込んで欲しい旨の要請が3社
あった。

 時間は万人に平等、24時間は誰にでも平等に与えられているとはいえ、与
えられたタスクにもよるが、てきぱきとこなしていく人もいれば、毎々納期に
間に合わないばかりか、質量とも他者に比して劣る人も多く、仕事と時間の割
り振りが下手な人も見受けられ、確かに個人の能力に寄るところが多いのも事
実である。昔から「忙しい人ほど仕事が集中する」と言われているが、忙しい
人は忙しい中でなんとか工夫や改善を重ねながら仕事を捌いていくので、さら
に仕事をする余力が生まれるのだと思う。

 私が担当した企業の社員から懇親会などで繁忙の実態を聞いてみると、個人
の能力、努力を超越している次元の話が多く、聞いているこちらにため息が出
てしまう内容も多く、個人の努力の範疇ではないと感じる。
 世の中には「残業してでも成果を出せ」とプレッシャーをかける企業もあれ
ば(論外だが)、“ノー残業デー”“有給休暇は消化しよう”とかけ声をかけ
る企業もある。
 しかし、ただ単に「残業を減らそう」「早く帰ろう」とかけ声ばかりでは何
も解決できない。仕事も中途半端に早々と帰る人が評価され、仕事に忙殺され
て残業している人が目を付けられてしまったのでは本末転倒といえる。結果、
実態は個人の対応に終始し、タイムカードを押してから残業が始まる会社もあ
るし、自宅持ち帰り仕事も多く発生してしまう。

 そんな中、日経ビジネス07年7月9日号特集「残業の減らし方、教えます」に
2社の先行事例が出ていた。残業を減らすことのみ目的化することではないが、
やはりトップ自らが先頭に立ち全社的に取り組むことが先決であろう。全社的
に環境整備を行い、時間も費用もかけて知恵も工夫も出していく必要がある。
個人の努力ではやがて臨界点に達してしまう危険性がある。

 人手不足は少子高齢化も含めて、日本の構造的な問題として恒常化していく
ことはもう予想の範囲である。やがては企業には、CEO、COO、CMO、
CFO、CROに並んで、タイムマネジメントに取り組む主幹役員CTO(チ
ーフ・タイムマネジメント・オフィサー)なんていうのも出現してくるのでは
ないだろうか。


             (2007/09/17 人材開発メールニュース第449号掲載)


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