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OJTと管理者のリスク
 プロスポーツの世界でも、常勝・強豪と言われるチームを作るためには、勝
つことと育てることを両立していく必要があります。野球やサッカーの世界を
見ていても、連覇するチームが少ないことを考えると「育てながら勝つ」とい
うことは、簡単なことでは無いと言えます。

 先日ある経営者の方とお話をする機会がありました。自社の管理者の方々へ
の愚痴?に近かったのですが、「社員のレベルアップを図るためにOJTを強
化しろと現場に要請しているのだが、うちの管理者は、わかりましたと言うも
のの、全くできていない…」というような内容でした。その経営者に対して、
「何か具体的な取り組みをしているのですか?」と聞くと、「現場のことは現
場に任せるべきだろう…」と言われていました。

 また別の会社で、OJTを推進する際に「答えを出すな、ヒントを出せ!」
というスローガンを掲げて取り組んでいる企業があります。部下(メンバー)
を育成するために、ただ単に指示を出すのではなく、部下(メンバー)に考え
る、意思決定する機会を提供することを積極的に支援されています。「答えを
出すな、ヒントを出せ!」ということは、簡単なようで、難しいことです。部
下(メンバー)に対し、「こうしろ、こうしたら…」と指示(答え)を出すこ
とは、比較的簡単で、しかも速く処理することができます。しかし、具体的な
指示(答え)を出すのでなく、答えを導くためのヒントを出すということは、
部下が意思決定するまでの時間もかかり、処理した結果に対する責任も負わな
ければなりません。根気と勇気がなければ、実践できないことでもあります。
その会社では、良いヒントを出せたかどうかが、管理者を評価する際の大きな
要素になっています。

 人材を育成するということは、育成しようと掛け声を掛けるだけなく、根気
と勇気を持たなければ実践できません。業務を処理することが大切なのか?部
下をレベルアップすることが大事なのか?方針によって大きく変わってきます。
現場に「OJTを推進しろ」とトップが要求するのであれば、それに見合った
環境を整備してあげることも大事です。素晴らしく有能な管理者がいるのであ
れば別ですが、ただ、「OJTを強化しろ」と現場に要求するだけでは、旗振
れども踊らずということではないでしょうか?

 部下(メンバー)を育成する機会をつくるということは、現場を仕切る管理
者の方がリスクを負うということでもあります。リスクを現場だけに負わせて
は、上手く機能しないことが多いようです。管理者の負うリスクに対し、理解
を示す、軽減するための支援を全社的に行うことを考えなければ、部下(メン
バー)の育成は、進まないように思われます。
 皆さんの周りではいかがですか?


             (2007/01/29 人材開発メールニュース第418号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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