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情報は常に危険にさらされている
 企業が守るべき情報は数限りなくある。顧客情報や社員の住所録など個人情
報に関わるもの、新製品情報や経営重要事項、とみに最近は経営重要事項など
株価に連動するしインサイダー取引にも波及しかねない。
 また、近年はインターネットの普及で、個人のパソコンから勝手に情報が流
出する可能性も高いし、閲覧したホームページからウイルスが感染したり悪意
のあるプログラムから意図せずダウンロードされる場合もある。ある本を読ん
でいたら、携帯電話からでも情報が漏れるおそれがあるという。まさに、企業
の「情報」は常に危険にさらされているといってもいいだろう。

 それに対抗してか、企業の情報セキュリティ意識は高まり、詳細なセキュリ
ティのルールを決めているところも多いし、セキュリティポリシーを公に発表
している企業もある。私の取引先では外部(私のようなもの)にもセキュリテ
ィへのルールを開示して遵守を要求してくるところも出てきた。

 先日、某研修会場で講師を務めていた。その会場ではさまざまな企業の研修
が実施されており多くの人が出入りし、いわば「公道」に近い状態だ。私はタ
バコを吸うので休憩時間などに喫煙室に入る。するとそこに上場企業で外食産
業の社員が数人タバコを吸って談笑している。このフロアはその企業と私の関
係先だけだ。入り口の看板を思い出すと“経営塾”と書かれていたので、たぶ
ん経営幹部(将来の)が集まって研修をしているのだろう。

 何気なく聞いていると、耳に入ってくる言葉はかなり生々しい。いわく「今
期の経常利益は○○円」「来期、○△(私も知っている実名企業)を買収か、
資本提携をして×△の事業を強化する方向が決まった」「副社長の○□は次の
株主総会で退陣するそうだ」と、私に株の心得があれば泣いて喜ぶような話を
平気で、それも声高に話しているのだ。本人たちは研修室の延長戦で意識して
いないようだが、文書やデータとして残らないとしても機密漏洩に等しい。

 事務所に戻って、早速、この企業のHPを閲覧、話されたことは当然IR情報に
載っていない。きっと当該企業も社内では情報セキュリティへのさまざまなル
ールが設けられていると推察する。それもしっかりと守られているとは思う。
しかし、肝心要の経営幹部クラスからこんな場面で情報が漏れているとは想像
もつかないだろう。飲み屋で愚痴話、酔った勢いでの発言、さまざまな場面で
情報が漏れる危険性は常に孕んでいる。「人の口に戸は立てられない」とはい
うものの、気をつけてしかるべきだろう。
 でも聞いていた人間が私で良かった。聞いても何もできないからね。


             (2006/10/09 人材開発メールニュース第403号掲載)


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