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大学・短大の専門学校化?
 8月に発表された文部科学省・学校基本調査速報によると、大学・短大進学
率は52.3%、大学進学率は45.5%といずれも過去最高になったとのことだ。大
学院生も26.1万人、これも過去最高。高学歴化は進展している。とはいうもの
の、少子化も加速していて、まもなく“全入”の時代がやってくる。それにも
かかわらず、相変わらずの大学新設、新学部・学科創設も相次いでいて、少な
いパイの奪い合いの様相だ。結果、大学の定員割れは最大で160校、全体の
3割、短大の同様に164校、4割が定員割れになっている。

 少しでも学生を集めることを意識してか、新設されるものは福祉系や看護系
が多く、時流に合わせてという感じがする。中には「マンガ科」なんていう学
科を新設する大学もあり学生が集まりそうなら何でもオーライの状態。相変わ
らずの資格取得をメインとした“大学・短大の専門学校化”も顕著だ。 アカ
デミックな世界も世の中の時勢・潮流、実学(資格取得)重視に勝てなくなっ
ているのかもしれない。

 一方で、専門学校も、鍼灸科や看護・福祉系はもちろん、サッカー、アウト
ドア、野球といった専門学校も出始めていて、その垣根のシームレス化も加速
している。また、地域の学校が多数参加して単位互換制度も盛んになってきて
いる。極端な話、私立○○大学の学生が、勉強のほとんどを○○国立大学で学
ぶことも可能だ。

 こうなると、まずは「大学卒」の学歴そのものが価値低減してくるといえる
し、一部の大学を除いて「どこで学んだか」はさほど価値がなくなる。それ以
上に「何を学んだか」の学習歴、「何を取得したか」の結果歴が価値の多くを
占めてくる時代になってくるのは間違いないと思う。そこで出会う人たちとの
人間関係は別として、「そこだけで得られる」ことは格段に少なくなってくる
のではないだろうか。

 果たしてそれでいいのだろうかと考え込んでしまう。それでなくとも大学生
の学力の低下は甚だしく、これに今後「ゆとり教育世代」が加わってくる。
 教育基本法の改正論議もあるが、本当の意味で「日本の教育をどうするか」
の議論と方向性が先決ではないだろうか。それでないと、いつまでも再チャレ
ンジの話ばかりになってしまう。まずは最初のチャレンジをどうするかが問題
ではないか。何か「最初から負け組ありき」の政策に思えてならない。


             (2006/09/04 人材開発メールニュース第398号掲載)


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