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新卒採用の現場から−2006年・夏
 あと1ヶ月後くらいで夏休みだというのに、人事採用部門の人たちは採用活
動で思うように学生が集まらない、あるいはやっと内定に漕ぎ着けたものの内
定辞退の続出に頭を抱える、さらに内定辞退があるのではと戦々恐々とする、
思うに任せない内定者確保…と苦労の連続で夏休みどころではないだろう。予
定定数にほど遠く通年採用を覚悟する企業では、秋以降の準備もしなければな
らない。今年の採用を悪戦苦闘しているうちに、もう再来年の採用が始まる。

 “内定コレクター”、日経新聞の特集で有名大学生の複数内定組の記事が出
ていたのは記憶に新しい。今年は複数内定組が近年に増して多いように感じる。
私の学生向けWebに立ち寄る学生のこれまでの最高内定数は22社、ところ
が今年は25社が猛者がいるし、10社内定が2−3人いる。また、私が指導
している大学の学生はメーカーだけで5月末に8社内定を持っていて、まだ第
一志望と第二志望が残っているという。どちらかに受かれば現在の8社は切る
という。実に強気だった。

 普段接している学生を見ていると、応募先の脈略のなさが気になっている。
地方の学生では、電力、地方銀行、製造業、大手進学塾と業界バラバラ受験は
ごく普通。こうした傾向は地方だけかと思っていたら、東京の学生はメガバン
ク、製造業、販売会社、コンサルティングファーム、不動産会社を受験してい
た。また、企業担当者に聞くと、内定辞退の学生にどこに決まったかを聞くと、
自分の業界とはまったく違う業界の企業名を言われて「そことうちとが併願な
の」と驚きとともに、戸惑うらしい。関連性がなく説得しようがないともいう。

 私はこうした傾向を“ピンポイント選社”もしくは“ワープ選社”と読んで
いる。一つの業界もしくは核になる業界と周辺業界を軒並み受験していくので
はなく(もちろんそうした就活行動を取る学生も多くいるだろうが)、興味を
もった会社、説明会に参加できた会社だけを飛び回り、その相互関係は一切関
係がうかがえないない就活である。効率も悪いだろうし、1社毎に志望動機を
考えるのも大変だと思うが、彼ら彼女らはあまり意に介していない。というよ
りも、業界とか扱うもの、あるいは業種の機能にこだわりがないのかもしれな
い。先般の8社内定の学生は、かろうじて製造業オンリーの就活だが文系とい
うこともあるのか、工作機械、自動車部品、半導体、計測機器、服飾部品、原
料、住宅設備、化学とバラバラであった。「彼らは興味をもった会社を回る」
と書いたが、「どのような興味をもったか」は定かでないし、「それぞれに興
味を持った」としか言いようがない。

 採用担当者にとってみると、同業他社に持っていかれることはライバルが良
い人材を確保することで悔しい。しかし、まったく異業種の内定での辞退を言
われても面接の時の業界に賭ける意気込みは何だったのかと訝り空しくなるの
ではないか。ある意味、暑さ以上に辛い夏といえる。


             (2006/07/17 人材開発メールニュース第392号掲載)


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