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研修企画−課題を掘り下げる
 最近景気が良くなってきたという話を聞くことが増えてきました。人材開発
の現場においても、新卒採用は過熱する一方で、また採用が難しいと考える企
業は、既存社員のレベルアップを図るべく、人材育成にさらに投資を強化する
等、たしかに以前と比べると賑やかになっている感じもします。

 私がお手伝いする中堅・中小企業においても、新たに、また久しぶりに研修
に関する相談が増えています。ただ、研修企画を相談される時に、研修対象を
限定して相談される場合は注意する必要があります。よくあるのは、問題にな
っている社員層を対象とした研修を実施したいと相談されるケースですが、そ
ういう依頼を受けた時には、問題になっている社員層だけでなく、必ずもう一
度全体像を把握するようにしています。

 例えば、「最近中堅社員に元気が無い。彼らがやる気を出すように、何か良
い研修のアイデアはありませんか?」という相談が舞い込んでくることがあり
ます。こういう場合、安易に中堅社員向けの研修を考え始めると、ほとんどの
場合が失敗に終わるような気がします。前述の通り、もう一度、組織や会社の
全体像に立ち返り、本当の課題は何かを見直すことも必要です。「中堅社員に
元気が無い」というのは、課題ではなく現象なのかもしれません。真の課題を
探っていくことが必要になります。

 もう少し具体的に言えば、「中堅社員に元気が無い」のは「なぜ?」と考え
る必要があります。トヨタ自動車の改善活動ではありませんが、「なぜ?」を
繰り返し考えることで、真因を探る必要があります。
 例えば「中堅社員に元気が無い」のは、目標の設定や評価などマネジメント
に問題があるのかもしれません。元気の無い中堅社員に何らかの研修を行うよ
りも、「中堅社員の育成を具体的に考える」というテーマで管理者層を研修し
た方が、課題の解決につながるかもしれません。また、研修だけでなく、権限
を与える、仕事を任せるなど、研修以外の方法でも様々な解決策があるように
思われます。

 研修に限ったことではありませんが、課題が見つかった際には、さらに掘り
下げてみることが重要です。逆に言えば、失敗する研修の多くは、研修内容な
どプログラム上の失敗というよりも、課題の設定ミスが多いような気がします。
このコラムでも、いつも書いていますが、研修は手段であり、目的ではありま
せん。研修を企画する場合、当たり前ですが課題が存在して、その解決策を考
えるというプロセスが存在します。しかし、常に課題そのものを見直す、掘り
下げるという意識を持つことが必要ではないでしょうか?


             (2006/04/24 人材開発メールニュース第381号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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