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新卒採用が過熱する中で?
 最近私の周りでは、今年の新卒採用は厳しかった、来年はさらに厳しくなり
そうだという声を聞くことが増えています。少し前まで“就職氷河期”と叫ば
れていたことを考えると変化のスピードが速いということを改めて実感してい
ます。
 その反面、個人的な意見で恐縮ですが、最近の新卒採用の急激な回復を見て
いると、本当に全ての会社が、そこまで採用が必要なのかと言う素朴な疑問も
持っていますが…。

 様々なところから発表される今年の新卒採用関連の調査を見ていますと、概
ね大企業では「質の面で不満」、中堅・中小企業では「質・量両面で不満」と
報告されていることが多いようです。私の地元福岡でも、東京ほど新卒採用が
急激に変化しているわけではありませんが、中小企業では、採用人数は確保で
きても質については昨年より落ちた感じがすると言われる経営者・採用担当者
が増えています。

 新卒採用の急激な回復の背景には、企業業績の回復、2007年問題やここ10年
の採用抑制に伴う、いびつな年齢構成の是正などが要因になっていると言われ
ています。特に私がお手伝いする中小企業では、業績が回復基調にある中で、
年齢構成を是正したい、新卒を入れることで30歳前後の中堅社員に部下指導や
後輩育成を経験させ、さらに成長して欲しいと言う声が強いようです。

 少し前のコラムでも書きましたが、全体の採用環境が良くなると、やはり人
材は大手企業に流れ、中堅・中小企業の採用は苦戦します。採用競争力が弱い
中堅・中小企業においては、採用だけでなく育成・定着に力を注ぐことも必要
です。また採用を強化するにも、少し考え方を整理する必要があるように思え
ます。

 新卒採用が売り手市場に変化していく中で、新卒採用を戦略的に実施するこ
とは当然必要です。しかし、本来の目的が、年齢構成を是正したい、中堅社員
にさらに成長して欲しいと言うことであれば、新卒採用はあくまで一つの手段
に過ぎません。採用競争力が弱い中小企業において、あえて苦戦することが目
に見えている新卒採用に力を入れるよりも、第二新卒クラスの未経験者の採用
に力を入れた方が、目的を達成しやすいこともあるように思われます。他社も
新卒を採用しているので、わが社も採用しようと言う考え方では、かなり危険
だと言えます。
 苦戦が予想される来年の新卒採用において、もう一度何のために新卒採用す
るのかを見直す必要があると言えます。“新卒採用を戦略的”に実施するだけ
でなく、“戦略的な採用”(新卒・中途を含む)を実施することが必要になっ
ているのではないでしょうか?


             (2005/11/14 人材開発メールニュース第359号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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