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定着促進の基本
 この一年で、採用(新卒・中途)環境がかなり変化しているように思われま
す。全体的に企業側の採用意欲が回復しているようで、私がお手伝いしている
中堅・中小企業では、採用し難くなったという声を聞くことが増えています。
全体の採用環境が良くなると、やはり人材は大手企業に流れ、中堅・中小企業
の採用は苦戦します。採用競争力が弱い中堅・中小企業においては、採用する
ことも大事なことですが、むしろそういう時期こそ、既存社員の定着・育成に
力を注ぐことが必要だと言えます。

 私の周りでも、採用で苦戦する一方で、急に社員が辞めたいと言い出して困
った嘆かれる企業もあります。企業側からすれば、「急に辞めたいと言い出し
た」と認識していますが、恐らく辞めたいと言った個人側からすれば、「ずっ
と悩んでいた」ということではないでしょうか。

 定着を促進するため、一番大事なのは社員の声を聴くことです。特に若手の
社員においては、経験を積めば積むほど、これまでとは違った困難な仕事や環
境に遭遇することになります。周りから見ると、大きな困難でなくても、当事
者である本人は、かなり悩んでいるケースがあります。不安や悩みを抱え続け
ることで、自信を失い、前向きに取り組めなくなる、と言った悪循環に陥るこ
とはよくあることです。

 社員の声には、単なるわがままのようなものもありますが、わがままも含め、
まずは受け止めてあげることが必要です。中小企業であれば、少なくとも入社
3年目ぐらいまでは、経営トップと最低年に1回は個別に話す機会を提供する
ことをお薦めします。上司−部下で面談を実施している企業は多いようですが、
中小企業であれば、トップ自らが「定着・育成」を重要な課題と捉え、直接話
を聴くことも必要です。
 入社後3年間続けて実施すれば、社員側にも意見を聞いてもらえるという意
識が刷り込まれます。そうすると後は、必要な時に声を挙げてくるようになり
ます。社員が辞めたいと言い出してから、話を聞くのではなく、未然に防ぐ・
現場の状況を絶えず把握することが必要です。
 皆さんの周りではいかがですか?


             (2005/10/24 人材開発メールニュース第356号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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