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中小企業における中堅社員育成
 私がお手伝いしている中小企業で、中堅社員に何か教育したいが、何かいい
方法は無いかと質問されるケースがあります。中堅社員と言っても、会社によ
ってかなり分類の違いがあったり、現場では忙しく動き回っていることもあり、
何か教育をしたいと考えても、どうすべきか具体的なアイデアが思い浮かばな
い企業が多いようです。

 実際に私がこういう相談を受ける際には、大きく2つの方向に分けて、企業
側のニーズを整理していきます。1つは専門性を伸ばす方向、もう1つは将来
的なマネジメントの準備を行うという方向です。「専門性」「マネジメントの
準備」という2つの軸で、その企業ごとに、今どちらを中堅社員と呼ばれる方
々に期待しているかを整理して行きます。大手の会社であれば、中堅社員と呼
ばれる対象者がかなり存在して、専門性とマネジメントという両面を、段階的
にトレーニングすることも可能かもしれませんが、中小企業では、2つに整理
するといっても、Aさんは「専門性」、Bさんは「マネジメントの準備」と、
ニーズが集約できないこととも多々あります。

 ニーズが集約できない場合は、無理に集約せずに、個別のニーズに合わせた
進め方を実施します。例えば、「専門性」をさらに磨いて欲しいと期待する中
堅社員には、もっと難しい仕事を担当させる、もう少し担当する職務の幅を増
やす、新しいサービスや業務の進め方に対する企画書を提出させる、部門内の
課題を解決するためのプロジェクトを担当させる、等様々な方法があります。
 逆に「マネジメントの準備」を期待する中堅社員には、部下をつける・増や
す、後輩の指導をさせる、後輩指導に対する計画書を策定し最終的には部門内
の育成マニュアルとしてまとめあげる、外注先・協力先などのとりまとめを担
当させる、等これも様々な方法があります。

 中堅社員と呼ばれる層は、育成ニーズが多様化する層だと思われます。また、
何かを教えるというよりも、現場の仕事を通じて自ら学び成長することが最も
期待できる層であるとも言えます。このコラムでもよく書いていることですが、
「人材育成=何か研修をやる」という考え方だけでなく、個々の育成ニーズを
明確にして、成長機会を与えることが一番大事だと思われます。特に中小企業
においては、中堅社員の「数が少ない」「一番成長が期待できる層である」と
いうメリットを最大限に活かして、中堅社員という括りではなく、一人一人の
顔を思い浮かべながら、育成ニーズを整理して、仕事上で成長できる機会を増
やしていくことが大事ではないでしょうか?


             (2005/06/27 人材開発メールニュース第340号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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