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育てると教える
 先日ある会社の勉強会に参加させていただいた時に話ですが、「人材が育つ
環境作り」という話題で、「育てる」ことと「教える」ことについて議論が盛
り上がっていました。
 改めて「育てる」と「教える」の違いを考えてみると、皆さんはどんな印象
をお持ちでしょうか?

 どこの会社・組織でも?人材育成は重要であるという話を聞きます。前回の
ワンポイントアドバイスでも書きましたが、「では具体的に人材育成を進める
ためには」という話になると、往々にして議論は人材育成=何か特別な取り組
みを行う(例えば研修など)という方向・方法論に流れていく傾向が強いよう
です。特に部下育成の話になると、どうやって「教えようか」という話に傾倒
することも多いようです。

 個人的な話で恐縮ですが、私も家に帰れば三人の子供の父親でもあります。
子育てについては色々な考え方があると思われますが、基本的に放任主義?の
私は「子供を育てる」という気持ちは大事にしていますが、「子供に教える」
という感覚は年々少なくなってきているように感じます。子供たちが大きくな
るにつれ、益々「教える」ということは少なくなっている(ただ関わっていな
いという噂もありますが…)ように感じます。

 例えば子供たちの勉強もそうですが、何かできないこと、わからないことに
遭遇すると、助けを求めてきます。たしかにやり方を教えるのは簡単ですが、
度が過ぎると何度も同じところで助けを求めてきます。自分で考えていない・
解決していないので、身についていない…同じ失敗を繰り返していることもあ
るようです。本人のため、本人の成長を思えば、ある場面では突き放す、自ら
考えさせることも大事な経験だと言えます。

 会社や組織の中でも全く同じようなことが言えると思います。やり方や答え
を「教える」ことは、簡単で誰にもでき、愛情が無くても済むような気がしま
す。部下やメンバーが助けを求めてきた時に、やり方や答えを「教える」こと
は簡単で、短期的に見れば、処理のスピードも早いと言えます。ただもし、部
下が何度も同じ所でつまずき、何度も同じ場面で助けを求めると言うことであ
れば、自ら考えることを放棄し、成長が止まっているのかもしれません。長期
的に考えれば、大きなロスにつながっていると言えます。

 「育てる」ことには、愛情が必要です。本人の成長のために、考えさせる・
気付かせる時間も余裕も必要だと言えます。やり方・方法論の前に、「育てる」
覚悟が必要です。
 育てる覚悟が持てない人はマネジメントという職務ではなくて、違う場面で
能力を発揮することを考えた方がいいかもしれません。
 「育てる」ことを真摯に考えることも、人材育成を進めていく上で大事なこ
とではないでしょうか?


             (2005/01/31 人材開発メールニュース第320号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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