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どこまで引き出す?個人のやる気
 いかにメンバーのやる気を喚起して、持続させるか?=モチベーションをい
かに高めるかということは、経営・組織を運営するにおいて大事なテーマです。
 何によってやる気が上がる(下がる)のかは、当然個人によって違います。
同一人物でも、年齢や個人を取り巻く仕事環境・家庭環境が変化していく中で、
仕事の意味も異なっていきますし、何によってモチベートされるかも異なって
きます。例えば20代の独身者で様々なことに挑戦できる環境を求めてベンチャ
ー企業に入社された方が、30代に突入し、結婚・子供を持つようになると、い
ろんな事に挑戦できる環境よりも、むしろ落ち着いて働きたいという環境を好
むように変化していくこともあります。こういう方ばかりではありませんが、
会社や仕事に“何を求めるのか”は当然変化するものだと考えられます。

 価値観の多様化ということが言われて久しい時代ではありますが、やる気の
源は急速に多様化していると言えます。そのような中、個々のやる気に焦点を
当て、やる気を引き出そうとする試み、例えば、目標管理制度、自己申告制度、
社内FA制度などが増えています。

 モチベーションを高めるための取り組みを否定するわけではありませんが、
やる気の源=個々人が会社・仕事に求めるものが多様化すればするほど、個人
のやる気を経営・組織に反映しようとすると、取り入れ可能な部分と不可能な
部分と両方が存在するのが実情だと思われます。どこまでがOKでどこからが
NOなのか、線引きを社員に示さないまま=思想が無いまま、制度だけを進め
ているケースもあるようです。やる気を反映すると言って、そこに期待した個
人が行動を始める、にも関わらず何も変化が無いようでは、返って会社全体の
やる気が下がってしまうこともあります。

 企業・組織を運営していくためには、企業・組織の役割・使命で押していく
場面と、個人が保有するやる気を引き出す場面と両方が存在します。「企業・
組織のビジョンや考え方を個人に徹底するか」あるいは「個々の保有するやる
気を企業・組織に積極的に取り入れていくか」、どちらを中心に考えるかにつ
いては、全社的な方針が必要なのかも知れません。また、この場合はこちらが
中心などと、ある程度整理することが必要になっているようにも思われます。
 方針を整理した上で人材開発を推進しなければ、効果的な人材開発が実現で
きなくなっているような感じを受けます。人材開発部門やその担当者は、どこ
までやる気を反映できる環境や舞台を準備できるのか、はっきりと示す必要が
あります。折角、引き出そうとした「やる気」、引き出した「やる気」を発揮
する場が無いということでは、人材開発の大きなロスと言えるのではないでし
ょうか。


             (2004/11/22 人材開発メールニュース第311号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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