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仕事を任せるための視点
 雇用形態が多様化する中で、正社員以外の方が同じ職場でたくさん働くこと
が増えています。契約社員、派遣社員、請負、パート・アルバイトなど、様々
な雇用形態が混在している状態も珍しくなくなりました。
 様々な雇用形態の方々が混在する中で、もはや従来の正社員を中心とした人
材開発では、間に合わないこともあり、雇用形態別ではなく、担当する業務や
役割を切り口として教育研修を再構築している企業も増えています。業務や役
割を切り口とした、Off−JTの見直しも図られていますが、それぞれの現
場(現場責任者)が責任を持ってメンバーを育成することを期待されることも
あり、OJTの重要性が見直されています。

 OJTに限ったことではありませんが、メンバー育成の責任があるマネジメ
ント担当者に「仕事を任せるスキル」が要求されています。最近、エンパワー
メントという言葉も良く使われていますが、「仕事を任せる」ことは、頭の中
ではわかっていても、やはり簡単ではないと言う意見が現場のマネジメント担
当者から聞こえてきます。特にプレイヤーとして優秀だった方が、マネジメン
ト担当者になった際に、悩まれる大きな問題に一つになっているようです。プ
レイヤーとして優秀だった人ほど、目標達成の意識が強く、特にチーム内の仕
事の割り当てをする際に、身近な目標達成(仕事を処理すること)がメンバー
の育成よりも優先することが多く、自分がやった方が早い、間違いが少ない、
効果が大きい、などの理由で、いつまでたっても仕事を任せることができない
という話も良く聞きます。

 話は異なりますが、プロ野球やサッカーの世界で強いと言われるチームの要
因として、選手層が厚い=レギュラーと控えの差が少ないとよく言われます。
長いリーグ戦を勝ち抜くためには、その時々に発生する怪我やスランプなど、
完全には予測できないトラブルを対応するために、代わることができる、補い
合うことができることが必須の条件になっています。レギュラーばかりで試合
を戦っていると、いつまでも控えのレベルアップが図れず、不測の事態が発生
し、レギュラーが戦線から離脱することになれば、チームもズルズルと後退し
ていくこともよくある話です。目前の一試合に勝つことが大事なのか、リーグ
戦を優勝することが大事なのか、目標に対する認識を再確認することから「仕
事を任せる」ことはスタートしなければいけないと言えます。

 実際に「仕事を任せる」ことを進めていくためには、「違い」でなく「同じ」
を理解することが大事だと言われます。優秀な方ほど、誰かに自分の仕事を任
せようと思いますが、任せる相手に対して「考え方が違う」「やり方が違う」
など「違う」ことを列挙して、結局任せずに自分でやってしまうことが多いよ
うです。
 「仕事を任せる」には、まずどこが「同じ」かを知ることが大事です。一般
的に「違い」を探すよりも「同じ」を探すことは難しいと言われています。じ
っくり観察しなければ「同じ」は発見できません。「同じ」ところをたくさん
探して、相手をわかるようになれば、少しずつ信頼が芽生えます。そうすると、
任せ方(どういう任せ方がベストか)というアイデアもたくさん出てくるよう
です。
 皆さんは、周りのメンバーの「同じ」をどれぐらい理解していますか?


             (2004/06/14 人材開発メールニュース第289号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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