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人事制度構築・見直しの基本
 人事制度、特に考課(評価)については、それぞれの企業で様々なやり方が
導入されていますが、大事なのは、経営者の考え方・理念を反映させること、
そして絶えず見直しを図ることではないかと思われます。人事制度は社員(メ
ンバー)が思う存分力を発揮し、会社の成長を促すために整備されるべきもの
です。そのためには経営者の考え方・思想を反映させたものでなければなりま
せん。「言ってること」と「やってること」が違うと正しく運用されない?の
は、言うまでもありません。また環境変化と共に期待される役割は変化します
ので、絶えず制度も変化・調整が必要になってきます。
 その会社“らしさ”を導き出すためには、各社の制度のあり方は違って当然
だと思われます。

 逆に他社事例を参考に評価制度の導入・改定した場合、上手く行かないとい
う話をよく耳にします。その大きな原因の一つとして、その会社の企業理念・
風土や人事に対する「思想」と他者事例の「思想」の違いがあるように思われ
ます。また会社の規模が大きくなると、経営陣からの要請で人事部門が主体と
なって制度作りを行うケースもあるようですが、これも経営陣自らが制度作り
に参加していない場合は、ミスマッチを引き起こす原因になることもあるよう
です。

 話は変わりますが、ある企業(その企業は脱サラした何人か方が集まって創
業した)から人事制度について相談したいと依頼がありました。その企業では、
事業成長と共に人員も拡大し、本格的に人事制度も構築したいと考えていたよ
うです。先方に訪問して、ミーティングをしていたわけですが、先方はまだ具
体的に「こうしたい」というイメージが無かったために、少しアイデアを引き
出そうと、いくつか事例を紹介しましたが、ほとんど反応がありません。
 そして、一通りこちらからの説明が終わった後に、経営陣の一人が「紙に書
かれた人事制度や評価基準、こういうものを作りたくて会社をスタートしたわ
けではない。こういうものが嫌で自分たちは会社をスタートしたんだ」と言わ
れました(思わず、名言だと個人的には感動していましたが…)。

 そこから、制度を作ることが目的ではないことを再確認し、本当に「今、こ
のタイミングで必要なものは何か」を議論することからスタートしました。結
局、最低限必要なもので、社員にとってわかりやすいものからプロジェクトと
してスタートしましたが、今でも試案つくっては、経営陣や創業時の考え方・
理念と照らし合わせてどうかを擦り合せ、試験的に導入し、また作り変えるこ
とを繰り返しながら継続しています。
 またプロジェクトの進行状況も、都度社内に情報を報告、公開するような形
で進めることで、社員の理解を促進することを心がけています。

 多少、時間はかかりますが、その会社“らしい”ものが少しずつ形作られて
いるのはないでしょうか。
 人事制度は経営者の想いを形にしていく作業であるとも言えます。経営でも
同様のことが言えますが、人事制度の構築においても、判断する際の基準とな
る理念に立ち戻ることは非常に重要です。人事思想・理念を固める部分に十分
に時間をかける─それは、基本中の基本ですが、基本を大事にすることが益々
重要になっているように思われます。


             (2004/05/31 人材開発メールニュース第287号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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