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経営理念・ビジョンで横串を
 私が日頃お手伝いさせていただいている企業の中には、丁度成長期の企業、
事業規模・社員数ともに急激に伸びている企業がいくつかあります。そのよう
な成長途上の企業の経営陣から、たしかに業績は伸びているものの、会社の雰
囲気が以前に比べてあまり良くないという話を聞くことがあります。

 そのような話題が出る場合、特に全体感、一体感が以前比べると弱くなった
と言われることが多いようです。従業員数が少ない頃は、メンバー全員がそれ
ぞれ担当業務はあるにしろ、お互いの顔が見える環境で、足りないところを全
員で補うという形で進めることができます。しかし、業績拡大に伴い、各業務
の量・質ともに増え、社員を増やすと共に各業務毎の専門性が要求される中で、
業務の細分化が進み、メンバーの一人一人はそれぞれ担当業務に取り組んでい
るものの、メンバーが少なかった頃のような全体感や一体感が薄くなったと言
われているようです。

 特に業績拡大に伴う増員を、即戦力の増員(=業務知識や業務スキルを重視
する中途採用)に依存してきた企業では、上記のような傾向が大きくなります。
仕事はできるが、仕事・業務を進める上での価値観の違いが、結果として組織
に悪影響を及ぼしているケースも少なくないようです。最近私も色々な場面で
考える(考えさせられる)ことが多いのですが、採用・育成と言う場面におい
て経営理念や経営ビジョンに立ち戻るということが非常に重要になっているよ
うに思われます。採用の場面で考えれば、仕事ができるかどうかだけなく、企
業が持つ理念やビジョンに共感できる人材かどうかという見極めが必要になっ
ていると言えます。

 急激に社員数が拡大した企業に限らず、組織としての足並みが乱れているケ
ースにおいては、経営理念や経営ビジョンを通じて、横串を通すことが今後益
々必要になると言えます。例えば、「顧客第一主義=お客様を大事にする」と
いうビジョンが掲げられている場合、ただ言葉を共有するだけでなく、現在の
経営環境の中で、「顧客とは何を意味するのか」「大事にするとはどういうこ
とか」と一つ一つ噛み砕いた形で、経営トップから意味を共有していく試みが
必要です。また絶えず、共有できているかどうかを確認する意識、危機感を持
っていることが重要になります。その一つ一つの積み重ねが、企業の倫理観や
社会的責任の要請に応えることにつながるとも言えます。
 皆さんの周りでは、どのように理念やビジョンを共有していますか?


             (2004/01/26 人材開発メールニュース第270号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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