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中途採用の掛け違い
  労働市場が流動化する中で中途社員の比率が増えている会社が多くなってい
ます。特に最近では、新卒採用を削減しても中途採用を積極的に行う会社も多
いようです。また積極的な中途採用が行われる一方で、全てというわけではあ
りませんが、折角採用したにも関らず、すぐに退職してしまう人も少なくない
ようです。
 このような場合、入社前の企業側の説明が不十分で入社後「聞いていた話と
違う」という企業側の情報提供不足によるミスマッチが一つの理由として考え
られます。また、もう一方で個人側の職業観が確立されていないという個人側
の準備不足ということも考えられます。

 中途採用で入社してすぐに退職した方、また退職を考えている方に話を聞く
と、たまに「この会社はおかしい」という言葉を聞くことがあります。
 特に第二新卒や20代半ばぐらいの方からこのような言葉を聞くと、少なか
らず不安を感じます。恐らく「おかしい=間違っている」と言う発言は、何ら
かの価値観、基準に基づいて判断されていると思われます。当然中途採用者の
場合は、これまでの仕事での経験(=前職での経験)をベースとして様々な判
断を行っていると考えられます。
 一方的に企業側を擁護するわけではありませんが、企業も生き物です。企業
も何らかの価値観、基準を持っています。コンプライアンスなどが話題となる
ように法令を遵守することは当然ですが、基本的に人間と一緒で一人一人(一
社一社)異なる価値観、基準を持っています。この価値観・基準は普遍のもの
もあれば、時代・環境とともに変化していく部分もあります。
 個人−企業、お互いの価値観・基準を照らし合わせて、「合ってる、合って
いない」という考え方であれば理解できるのですが、自分の価値観・基準だけ
を主張して、企業(組織)が「おかしい=間違っている」という言葉が出てく
ると、仮にその会社を辞めたとしても、この先大丈夫かな?と心配になること
があります。お互いに違いがあるという前提に立って、相容れるものかどうか
を考えなければ、自分に合った“場”は見つからないように思われます。

 少し、企業側・人材開発の視点から考えますと、前述の通り中途採用を強化
する会社が増えています。ただ、新卒と違って中途の場合、注意しなければい
けないのは、中途採用者は新卒者よりも、働くことや仕事に対する何らかの価
値観や基準を持っていることです。その価値観・基準が入社後即活躍できるか
どうかを左右すると言っても過言ではありません。
 したがって本来は、新卒者よりも中途採用者の場合、入社・導入部分での丁
寧なケアを行う必要があります。ただ実際は、中途=経験があるために、場合
によっては何もケアされていないことが多く、突然退職したいと言う話が出て、
慌てるケースも少なくないようです。もしかしたら、ほんの僅かなボタンの掛
け違いで、折角採用した貴重な人材を損失しているかもしれません。

 中途採用は、時期が特定されてなかったり、採用人数が少ないことが多く、
導入部分のケアは、OFF-JTというより、ライン上での対応が基本となります。
中途採用者の採用・育成は、採用(人材開発)部門だけでなく、ライン上の管
理者に積極的な関りを持たせる仕組みが必要であると考えられます。


             (2003/10/14 人材開発メールニュース第256号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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