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勤労観・職業観を育む信用と活用
 最近このメールマガジンでも掲載していますが、若年層に勤労観・職業観を醸成
しようと言うテーマが様々なところで取り上げられています。その背景として、若
年層の失業率が上昇していること、また折角入社したにも関らず離職する割合が高
いことなど、少し対処療法的な感じも受けますが、失業、離職の有無に関らず、今
後ますます勤労観・職業観に関する取組みは大事になると言えます。

 中途採用関連の仕事をお手伝いしているとよくわかることですが、社会人3年目
ぐらいの転職希望者の方々と話しをすると、会社の規模とは関係無く、入社して成
長している人材と成長していない人材の差を痛感することがあります。
 恐らく入社した時点では、差と言われる物はほとんど無かったと思われますが、
3年ぐらい経験を積んだ後では明確な差が生じています。この理由としては、2つ
の側面が考えられます。一つは企業サイドの問題−入社から3年間、教育も含めど
のような環境で、どのような経験を積ませたか。もう一つは個人サイドの問題−勤
労観・就業観に代表されるように自分の仕事についてどれだけ考える、自分自身と
向かい合える機会があったか、ということが挙げられます。

 よく転職希望者がキャリアアップを望んで転職活動をしているなどと言われてい
ますが、実際に話して優秀だと感じる若手の人材に共通するのは、キャリアアップ
と言う前向きな表現よりも、所属している会社・組織への不安、またその場にいる
自分自身への不安と言う方が適切です。真剣に自分・仕事・会社(環境)に関して
考え、危機感を持っている現れであると言えます。

 ここ数年、就職難ということもあり、逆に企業サイドから見れば、例年よりいい
人材が採用できたという話を聞くことが多かったように思えます。ただその人材が
活躍しているかどうかと聞くと活躍しているという声を聞くのは残念ながら少ない
状況です。
 例年よりいい人材を採用できているという実感があるのであれば、最初の数年間
にもっと仕事に対して考える場を与えたり、大胆に仕事を任せる試みがあってもい
いように思えます。入ってくる人材は良くなっているが、受入れ体制は以前と変わ
らないでは、やはりミスマッチが生じる可能性が高くなります。

 新人・若年層の伸び悩みの一因は、教育していないということではなく、信用し
ていないこと、活用していないことにあるのではないでしょうか。何から何まで教
えると言うことではなく、個々人が自発的に学ぶ、学び始める環境をつくることが
望まれていると言えます。


             (2003/06/02 人材開発メールニュース第238号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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