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自社の独自性を語る自立した人材
 以前に比べて、自分の会社を自慢する人、自信を持って話す人が少なくなったよ
うな気がします。20代の方と話していると顕著なのですが、「自分がやってる仕事
は面白いですよ」ということは聞くことはあっても、「自分の会社は面白いですよ」
と聞く機会が減ったように思えます。

 研修で、「『自分の仕事について、いい所、面白い所、自慢できる所』と『自分
の会社について、いい所、面白い所、自慢できる所』をそれぞれ10個程度書き出し
てください」と指示すると、結果がはっきりしています。年齢が若い人ほど、自分
の仕事については7〜8個程度出てきますが、自分の会社については5個に満たな
いようなケースが圧倒的です。
 この傾向をいいように取れば、会社ではなく仕事にコミットメントしているとい
うことになるように思われますが、自分の会社の「いい所、面白い所、自慢できる
所」をはっきり言えない人材が、お客様に何を話しているのか心配な気持ちにもな
ります。

 自立した人材が必要であると良く言われています。会社ではなく、仕事に対して
コミットメントしていることは、ある意味“会社人間”ではないと言えるかもしれ
ません。しかし、「自立した人材の主体的な行動を引き出す“場”」が企業である
と考えると、やはりベースとして互いの信頼関係が不可欠だと言えます。所属する
会社に対する信頼感が無く、ただ仕事にコミットメントしているようであれば、そ
れは自立した人材がいるのではなく、流失可能性が高い人材や事業のスピードを低
下させる人材がいるだけに過ぎません。

 自社の提供する商品・サービスを説明できる社員は当然ですが(最近は当然では
無いこともあるようですが?)、何故その商品・サービスを自分の会社が提供して
いるかを話せる社員が減っているように思われます。
 営業部隊などで特に顕著ですが、商品・サービスについて、他社比較などを含め
いわゆる商品知識については一生懸命勉強していますが、何故わが社がそのような
商品・サービスを提供しようとしているかについてはあまり触れられていないよう
な気がします。

 機能比較(他社比較など)ではなく、自社の存在意義(独自性)を正しく伝える、
発想の転換が求められているように思われます。そのためには、会社に所属する一
個人が、自社の経営や事業の方向性をしっかりと理解した上で、自分が提供する商
品・サービスとの関連性を自覚する必要があります。その過程で会社や事業に対す
るコミットメント・信頼感が醸成されると言えます。
 これからの人材開発のテーマの一つとして、自分の言葉で「他社との比較」では
なく「自社の独自性」という切り口で話せる人材をどのように育成するかを考える
ことも必要ではないでしょうか。


             (2003/02/10 人材開発メールニュース第223号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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