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職務拡大と職務充実
 先日厚生労働省「パートタイム労働研究会」の最終報告が発表されました。パー
トタイム労働者の増加、従来正社員がやってきた基幹的な仕事にパートが組み込ま
れつつある現状を報告する一方で、職務内容に応じた処遇(改善)が必要であると
報告されました。
 正社員を減らす一方で、パート、アルバイトを増員している企業は確実に増えて
いるようです。私の周りでも、パート・アルバイトの活用や育成をテーマにした相
談が増えています。パートアルバイトに限らず、比較的単調かつ定型的なオペレー
ション業務を担当させる方々のモチベーションをどう維持、増進させるか、それを
処遇面や育成面からどうするかという話題が多いようです。

 職務内容が単調化・定型化されることによって発生する疎外感・単調感を防ぐ、
モチベーションを上げるという点から考えますと、「職務拡大(job enlargement)
」と「職務充実(job enrichment)」という考え方があります。職務拡大とは、担
当させる職務の幅を広げることによる動機づけであり、職務充実は、仕事の幅では
なく、責任や権限の範囲を拡大して、動機づけを図ろうという考え方です。職務拡
大は、横への拡大・課業の量的拡大、一方職務充実は、縦への拡大、課業の質的充
実と考えると分かりやすいのではないでしょうか。
 恐らく多くの職場で、職務拡大や職務充実という言葉の意味を知らなくとも、日
常的に実践されているのではないかと思われます。

 しかし、実際は日常的に実践しているというよりも無意識に実践していることが
多いと言えます。多くの会社、職場では、職務拡大・職務充実がどちらかに片寄っ
て実践されていることが多いようです。企業、組織、管理者それぞれの好みかどう
かはわかりませんが、なぜかどちらかに片寄って実施されているケースが多いよう
です。勿論、全体の業務遂行をする上でどちらの方がやりやすいということもある
ようですが、実際は前述の通り、計画的にではなく無意識に実施されていることが
ほとんどではないでしょうか。余談ですが、職務拡大、職務充実の好み?を見てま
すと、職場、組織の風土、文化や、また管理者個人で考えますと個人の価値観に連
動しているような感じも受けます。

 逆に、育成される個人側に目を移しますと、特にパート、アルバイトの方々の職
業観は正社員以上に多様化しています。職務拡大・職務充実という2点に絞って考
えても、どちらかを好む傾向があるように思えます。具体的に言えば、仕事の幅が
広がることで喜びを感じる人に、幅を広げずに責任ある仕事を与えたとしても、面
倒な仕事が回ってきたと思われるのが関の山です。ただ実際の職場では、育成する
側、育成される側でこのようなミスマッチが発生していることも事実です。

 パート・アルバイトに限定したことではありませんが、個人の好む方向で職務を
拡大、充実させることで、かなりの動機付け、喜んで仕事をするというのも事実で
す。
 組織を運営する側(企業、組織、管理者)から考えれば、育成する個々人を見な
がらバランス良く職務を拡大、充実させることが必要かもしれません。また業務を
遂行する上でバランス良く実施するのは難しく、どちらかを優先させなければ行け
ないと言うことであれば、採用の段階から適正、志向を考えて採用を実施するよう
な努力が必要であるとも言えます。無意識から多少の計画性を取り入れることで、
職場全体が変化することはたくさん残されているように思われます。

 読者の皆様も、皆様の職場、また身近な職場を職務拡大、職務充実という視点で、
どのような育成がされているかと観察すると、色々新たな発見があるのではないで
しょうか。


             (2002/08/05 人材開発メールニュース第198号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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