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ロールプレイングと場面想定力
 優秀な営業マンに共通する一つ特徴として、イメージ力が優れていることを挙げ
ることができます。顧客に商談を進める中で、顧客からの質問を事前に想定したり、
質問される前に情報を提供するなど、商談に入る前にどれだけ「場面を想定できる
か」が、営業を進めていく上で重要なポイントだと思われます。優秀な営業マンの
方と話をしていると、商談の中で勝負が決まると言うよりも、商談に入る前に既に
勝負は決まっていると感じさせる人も少なくありません。場面を想定し、準備する
能力(営業に限ったことではありませんが)は、優秀な営業マンに必要とされる一
つの能力であると言えます。

 営業マンのトレーニング方法として、以前からロールプレイング(役割演技法)
を導入している企業も多いかと思われます。営業マン研修でのロールプレイングと
は一般的に、「営業マン対顧客」など現実に近い状況の実験的場面を設定し、参加
者にいずれかの役割を付与し演技させることによって、その役割の理解や、状況に
対する行動力、コミュニケーション能力などを開発することを目的に実施されるこ
とが多く、どちらかと言うと若手の営業マンを育成する方法として活用されていま
す。いわゆる「型をつくる」場面で多用されると言えます。
 ロールプレイングを用いるときは、参加者がいかに与えられた役割を真剣に演じ
られるかによって、効果が決まると言われています。悪く言えば、真剣に演じなけ
れば意味が無いと言われています。

 しかし、ロールプレイングの良さは、「基本的な型を作る」だけでなく、前述の
ような商談のイメージ力を高めることにもあると言えます。真剣に演じることより
も、より実際の商談の場面を想定して、「顧客からこんな質問が出たらどうする」、
「こういう質問にこう答えたらどうなる」など、情報を共有したり、商談を進めて
いく上で不足する情報を明らかにしていくことも可能です。

 研修の場面で最後までスムーズに終わるロールプレイングを「よく出来た」と言
われることもありますが、参加者がそのプロセスの中で新たに共有したり、見つけ
出した情報(知識)は逆に少なかったのではないかと思われます。むしろ途中で止
まったり、上手く最後まで終わらないケースの方が、より共有される情報と言う視
点で考えれば多かったのではないかと思われます。(勿論「型をつくること」を目
的にしている場合には、スムーズに終わることが成果になると思われますが。)

 営業の活路を見出す一つの方法として、漠然とした課題を追求する営業会議?よ
りも、一つの商談に絞ったロールプレイングを行って、情報を具体的に共有したり、
不足している情報を明らかにする作業は非常に重要です。そのプロセスの中で、ま
た新しい知恵が生み出されることも珍しくありません。まさに暗黙知を形式知に置
き換える一つのプロセスではないかと思われます。

 「ロールプレイング」は古くて新しい方法だと思われます。新人や若手の育成方
法として利用するだけでなく、また単に研修、OJTとして利用するだけでなく、
色んな場面で利用して様々な課題解決に用いることが人材開発的なロールプレイン
グの活用と言えるのではないでしょうか。


             (2002/06/24 人材開発メールニュース第192号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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