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落とす採用が続く中で
 ここ数年、雇用に関する記事や話題は、ほぼ毎日見たり聞いたりするようになり
ました。失業率の上昇や就職氷河期など、求職者にとっては非常に厳しい環境であ
ると言われています。またその一方で、雇用環境が厳しくなる中で、逆に企業側か
ら見れば、いい人材を採用できる絶好のチャンスだという話を聞くことも増えてい
ます。私個人としては、「求職者にとって厳しい」、「企業にとって絶好のチャン
ス」、いずれも偏って意見で、あまり正しいとは思えませんが、一般的にはそうい
う論調の話を聞くことが増えています。

 今採用の現場では、新卒・中途採用にかかわらず、一般公募すれば、ほとんどの
企業で募集人数よりかなり多くの応募があり、採用活動の中で絞込みと言う作業の
ウエイトが大きくなっていると言えます。
 またリストラが進められる中で、従来より採用スタッフが減らされている企業も
多く、採用活動を進める中で、応募者が増える一方で、対応する企業側の採用担当
者は減っているために、結果的に一人当りの業務量が増え、きめ細かい対応ができ
ないという悩みを聞くことも多くなっています。また業務を処理するために採用業
務の一部を外注化するという動きも増えていると言えます。

 どういう形であれ採用活動を進める中で、前述のような「選考から落とす」「断
る」という作業が増えていることは間違いありません。ここで注目したいのは「選
考から落とす」「断る」と言う作業をどのように進めているかと言うことです。程
度の度合いはあれ、新卒でも中途でも自社に応募した人材は、自社のファンであっ
たはずです。残念ながら現在の採用活動では、採用する人数は非常に限定され、圧
倒的に多くの方を落としていかなければなりません。ファンであった人々を落とし
ていく場面で、残念ながらいい加減な対応方法をしている企業も少なくないように
思えます、というより前述のような採用業務量の増加の中で、企業の落とした方へ
の対応の質が悪くなっている傾向があるように思えます。
 当たり前のことですが、採用活動に応募してきた人材は、採用場面から離れれば
一消費者、一生活者でもあります。採用活動の選考から落とす過程で、対応の質が
悪くなることで、自社のファンを減らすだけでなく、必要以上にアンチファンを生
み出していることも考えられます。

 多くの方を落としていかなければ採用活動が実施できない中で、どこまで丁寧に
対応するかということは、企業の市場、顧客に対する姿勢の表れであるとも言えま
す。
 基本的なことではありますが採用活動をスタートする前に、採用担当者の対応方
法の拠り所となる採用方針・指針を定め、方針・指針に基づいた採用活動を進める
ことの重要性が改めてクローズアップされています。特に外注化を進めていく場合
には、外注を依頼するパートナーに採用方針、指針の部分で共通理解がなければ、
非常にリスクの高い採用活動をしていると言わざるを得ません。

 雇用環境が悪くなる中で、企業の採用活動のあり方への注目が高まっています。
以前と比べ採用活動の意義、位置付けは、かなり変化しています。採用活動そのも
ので企業の信頼性やポリシーなどを評価されることも確実に増えています。採用活
動は、市場との貴重な接点である、より多くの方に企業活動を理解、認知させる場
でもあるという考え方で、採用活動を見直すことも必要ではないでしょうか。


             (2002/05/27 人材開発メールニュース第188号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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