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「逃げない人」待望論
 最近企業の経営者や経営企画を担当する方々とお会いし、こういう人材が欲しい
と言う話題の中で「逃げない人」という言葉を聞く機会が増えたように思えます。
「逃げない人」とは、困難に立ち向かうことができる人というイメージです。チャ
ンスに強い人と言うよりも、ピンチに強い人というイメージでしょうか。困難、特
にトラブルや失敗から逃げないで立ち向かう人材が欲しいと言う意見を聞くことが
多くなっています。

 事業、仕事を進めていく上で必ずトラブル、失敗は発生します。勿論いかにトラ
ブルや失敗を未然に防ぐか、発生する可能性を如何に減らすかと言う予防的リスク
管理(特に日本人が不得意と言われる分野でもありますが)も必要ですが、それで
もトラブル、失敗は必ず発生します。逆にトラブル、失敗が発生した場合の対応・
対処については、「改善」という言葉に代表されるように元来日本では積極的に行
ってきた分野でもあったように思えます。

 しかし、今「逃げない人」が欲しいと言う声が様々なところ上がっています。逆
に言えば、トラブル、失敗に立ち向かわない人が増えていると言うことでもありま
す。トラブル、失敗は受け止める、認識することによって始めて、乗り越える具体
的なアクションがスタートすることになります。
 逆にトラブル、失敗を受け止めない職場では、いつまでたっても問題解決が行わ
れません。問題は放置されたままになり、時間と共に問題はどんどん膨れ上がるこ
となります。当たり前のことですが、昨今の様々な所で失敗を隠す、認めない、そ
のためにどんどん問題が膨れ上がり、やがて一気に噴出する場面を目の当たりにす
ることが増えています。

 仕事上での失敗を発生させるの一個人かもしれませんが、失敗にどう対処するか
というのは個人だけの問題ではなく、組織の問題であるとも言えます。最近では失
敗を笑い飛ばせる職場が減り、失敗を厳しい目で追及するような職場の方が増えて
いるような気がします。勿論、何度も同じ失敗を繰り返されるようであれば困りま
すが、失敗を次につなげると言うよりも、失敗したら終わり、次は無い、というよ
うな雰囲気が強くなり、失敗が発生した場合は隠す、先延ばしするという行動がま
すます助長されているところも多いようです。

 「逃げない人」は、知識を与えるなどのトレーニングで育成できるものではあり
ません。仕事を任せて自ら意志決定させる場面を数多く経験させるなど、場を踏む
ことで身につくものだと言えます。修羅場をくぐらせるなど、今多くの企業で、若
手社員に子会社や事業部門の経営を任せるなどの動きが増えてきているのもその現
れであると言えます。権限を委譲する、自ら意志決定させる環境を与えることが必
要ですが、悪循環に陥っている組織では、業績が行き詰まるほど権限が委譲されに
くくなっているところがほとんどです。
 「逃げない人」の育成には、「失敗を許す、学ぶ組織」や「できなかったことを
話し合う、共有する職場」が必要ではないでしょうか。


             (2002/05/13 人材開発メールニュース第186号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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