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評価制度改定と管理者の悲鳴
 成果主義や業績主義に代表されるように人事制度が変更され、それに伴い管理者
は、以前よりも評価(考課)する機会が増えているのではないでしょうか。先日私
の友人で、地場の大手企業で管理者として活躍する友人と話す機会があったのです
が、彼いわく部下育成も大事だし、制度をきちんと運用することも大事だが、それ
にしても考課にとられる時間はとても大変だ。自宅に持ち帰って休日でも対応しな
ければ、とてもじゃないが終わらない。やはり一人で考課できる人数には限界があ
るし、回を重ねるごとに自分自身でも多少いい加減に運用しているような気もする。
その上組織を再編する中で管理者が削減された結果、自分には部下が増えた。また
人事制度も変わるらしい、変わることは知らされているがどう変わるかと言うこと
はまだ現場に情報が降りてきていない。今から考課の時期が憂鬱だ、いったい人事
は...。彼は滅多に弱音を吐くような人物ではありません。私と会うなり日頃の
愚痴を一気に話し始めたわけですが、彼のような問題意識を持っている管理者こそ
大事にしなければなりません。

 評価制度を運用する場合は、「制度そのものの質」を重視するケースと「運用す
る人」を重視するケースの2つがあります。制度重視型は、できるだけ考課基準も
含め最初からきめ細かくつくり、運用する人の負担をできるだけ軽減しようという
考え方です。当然の事ながら、制度を作り上げるまでの時間、費用が膨大になり、
えてして環境変化に対応して、再構築する場合に手間どったり、再構築そのもの意
志決定が遅くなるなどの欠点が指摘されています。
 一方、運用する人=考課者主導の場合は、制度についてはアウトラインを決めて、
できるだけ早期に導入し、導入前後の考課者研修で運用スキルの底上げを図ったり、
また運用後の考課者のフィードバックを収集し、制度の見直しを図っていく方法で
す。このケースは導入後の現場からのフィーッドバックも含め、考課者の運用スキ
ルが制度のレベルを決めてしまうため、社員全員がどの程度、制度に対してコミッ
トメントできるかが非常に重要なポイントとなります。
 勿論本来であれば、「制度」また「運用する人」両者にじっくり時間をかけるの
がベストですが、実際の現場ではやはりどちらかに偏っているケースがほとんどで
す。最近ではどちらかと言うと環境変化に応じて頻繁に制度を変えて行きたい、
また導入時のイニシャルコストを下げたいなど様々な理由で、「運用する人」をベ
ースにした方法がとられていることが多いようです?もう少し正直に言えば、「人」
ベースでありながら「人」に対するフォローが少ないような状況になっている場合
が多いようです。

 多くの企業で人事制度、評価制度を変更したという話を聞く機会が増えておりま
す。また同時に、人事制度や評価制度の導入支援サービスを提供するコンサルティ
ング会社や教育機関も増え、様々な手法が開発されています。導入支援するコンサ
ルティング会社や教育機関では事例を蓄積する中で、雛型の開発を進め様々なサー
ビスのパッケージ化を図っています。パッケージ化されたサービスは、企業側の導
入コストを低減することには寄与しているように思えますが、その一方で導入した
だけというケースも増えているように思えます。導入する企業、また導入支援する
コンサルティング会社どちらがどうだと言うつもりはありませんが、自社に適した
制度にするためには、必ずカスタマイズ、ローカライズが必要です。

 人事制度、評価制度を変える場合、人事部門主導で行われるケースがほとんどで
すが、運用するのは現場であるということを忘れてはなりません。導入する場面で、
人事部門だけで決定している企業も多いようですがこれも賛成できません。全ての
部門とは言いませんが、主要な部門を巻きこみプロジェクトチームを作る方が効果
的です。特に実際の現場で最も成果を上げている管理者(考課者)をプロジェクト
に参加させることがポイントになります。自社で一番成果を上げている人が一番使
いやすいように作ることが、最も自社に適したものができる方法であることは言う
までもありません。特に運用する人をベースに進めていくのあれば、導入時からモ
デルケース、どの現場(誰)を想定して予め決めるだけでも、かなり自社に適した
形に変わっていきます。また導入、運用場面で問題意識を持っている管理者(現場)
の意見を吸い上げることによって、人事部門がつくる制度ではなく、自社(経営)
として必要な制度になると言えます。
 評価制度運用することに悲鳴を上げている管理者は、周りにいませんか?


             (2002/04/22 人材開発メールニュース第184号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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