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1+1=?
 今年の1月から3月にかけて3社でリーダー層の研修を担当させていただきまし
た。ここでいうリーダー層とは、管理職にはなってないが、直接後輩の指導にあた
っている中堅社員と言われる方々です。それぞれの研修を担当させていただく中で、
「1+1=いくつですか?」という質問をしました。これは数学としての質問では
なく、実際に後輩指導にあたっている方々に、新人育成を担当することになった場
合、処理できる仕事はどうなるか、自分(1)と新人(1)合計2名で処理できる
仕事を思いついた数値で回答していただく質問です。

 3社合計で約60名の方に聞いたのですが、実際に出てきた回答は非常にバラエ
ティに富み、最小値は0.5、最大値は4、全体的に見ると「1未満」と回答した
方が約3割、「1以上2未満」と回答した方が約5割、「2以上」と回答したが約
2割という結果です。勿論ただ数値を聞くだけでなく、回答の根拠を全員から聞い
たわけですが、概要は下記の通りです。
 「1未満」と回答した方…自分の仕事の時間を割いて、新人の育成をするため、
自分一人で仕事をするよりも処理できる仕事量、スピードが遅くなるため1より小
さい。
 「1以上2未満」という回答した方…たしかに人数は増えるが、新人なので自分
と同じ仕事は期待できないため2より小さい。
 「2以上」と回答した方…お互いに刺激がある、一人でできないことができるな
ど、前向きな意見が多くなります。

 当然ながら、この質問には正解はありません。研修を企画運営する側から考えれ
ば、2以上が期待値であったり、あるべき姿かもしれませんが、むしろ大事なのは
実際に後輩指導にあたっている一人一人が回答した感覚値、その根拠を充分に汲み
取る必要があると言えます。回答した値と根拠を聞いて行きますと、各々の後輩指
導の考え方・進め方や現在の状況が非常によくわかります。
 実際に「1未満」と回答された方は、日々後輩指導に苦労していると言えます。
その原因についても、2つの問題があります。一つは、本人の問題、後輩指導の考
え方・進め方という問題であり、もう一つは後輩指導を取り巻く環境の問題です。
職務の中には、比較的簡単に教えることができるものもあれば、そうでないものも
あります。「リーダーが後輩指導が原因で、自分の仕事が遅れたり、できないとい
うことは、あってはならないことだ、それはリーダー本人の自覚の問題だ」という
ような話を聞くこともあります。ただそういう発言は、一方的な見方であるように
思えます。もっと後輩指導を取り巻く環境、人の配置や仕事上の役割分担など、職
場・組織の構造的問題が潜んでいるかもしれません(もう一言追加すれば、構造的
な問題を解決しなければ、リーダーの研修を行っても、さほど改善されません)。

 事実、私が今回担当した3社でも、会社ごとの平均値はかなり異なります。サン
プル数は3社ですが、各社の業績(売上・利益)と回答の平均値は相関関係があり
ます。業績の良い会社は「1+1=?」の回答平均値も高くなっています。(勿論、
リーダーの回答値が高いから業績が良いという見方もあれば、業績が良いから回答
される数値が高くなるという見方もありますが。)
 いずれにせよ全体的に回答された値が低い会社では、リーダーのトレーニングだ
けでなく社風も含めた構造的な問題分析も必要であると言えます。

 4月に入り、と言っても今年は4月とは思えない暖かい天候が続いていますが、
新入社員の姿を見て改めて4月の実感している方も多いと思いますが、読者の皆様
の「1+1=」いくつですか?


             (2002/04/08 人材開発メールニュース第182号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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